アパート経営で大切な火災保険とは?役立つ基礎知識をまとめました
アパート経営において、リスクを最小化するためにも、火災保険への加入は必須と言えます。
火災保険の補償範囲は火災だけに留まらず、落雷や雪災などのさまざまな自然災害も含まれます。補償範囲は加入する火災保険の種類や特約によって異なるため、加入前に検討することが大切です。
しかし、火災保険はさまざまな保険会社が提供しているため、「どの保険に加入すれば良いかわからない」という方もいるのではないでしょうか。
そこで、この記事では、火災保険の必要性や種類、補償範囲などを詳細にご紹介します。
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冒頭でもご紹介したように、火災保険の補償範囲は火災だけではありません。保険会社によっても異なりますが、広い範囲での災害に対応しています。
ここでは、火災保険に関する基礎知識をご紹介します。まず、火災保険とは何なのかを理解して、保険の加入を検討しましょう。火災保険の対象
火災保険という名前から、「火災で焼失した建物を補償してくれる」というイメージがある方もいるかもしれません。しかし、火災保険は火災だけでなく、さまざまな災害で補償されます。さらに、マンションやアパートなどの建物だけでなく、家財や什器などの動産も補償対象に含まれます。
日本では、自然災害における被害が深刻な問題となっており、今後も災害が増加する可能性があります。そのため、火災保険に未加入でいると、のちに後悔をすることになるかもしれません。
火災保険の対象となる災害は、以下のようなものが挙げられます。
■自然災害
火災や風水害、落雷、ひょうなどの自然災害に遭った建物や家財が保証されます。
■人為的な被害
破壊や事故、盗難など、モノを所有している限り、これらの被害を受ける可能性があります。このような人の手による被害も、補償対象となります。
■その他の被害
そのほかにも、飛来物や、車による衝突、ガス漏れなどによる爆発なども挙げられます。これらは、気を付けていても防ぐことができない被害のため、補償対象となります。地震保険の付帯について
さまざまな自然災害を補償してくれる火災保険ですが、一般的には地震災害は補償の対象外となります。地震による火災や津波被害への補償が必要な場合は、「地震保険特約」を付帯する必要があります。
地震保険は、基本的に火災保険の特約として付帯するもので、単独での加入はできません。補償対象は、住居部分のある建物と、家財補償を付けていれば家財一式です。地震や津波、火山の噴火を原因とする災害の際に、保証されます。
地震大国である日本においては、2011年の東日本大震災以降、特に需要が高まっており、現在では半数以上の方が火災保険加入時に地震保険特約を付帯しているといわれています。
なお、火災保険は保険会社や掛金によって保険料が変わりますが、地震保険は国と民間企業が共同で運営している保険のため、どの保険会社で加入しても保険料、補償内容ともに一律です。-
火災保険は、任意の保険のため、入らなければならないという決まりはありません。保険料も割高なことから、あえて加入しないという選択を行う人もいるようです。
ただし、賃貸住宅は、私有空間と共同空間に分かれており、共同空間についてはアパートオーナーが補償責任を負わなければなりません。そのため、火災保険を未加入のままでいると、のちに多額の補償を請求される恐れもあるでしょう。
ここで、アパート経営における火災保険の必要性を理解して、保険の検討の際に参考にしましょう。リスクに備えられる
火災保険加入の一番の目的は、リスクへの備えです。前述したとおり、入居者が入居時に加入する火災保険は、入居者自身の過失で専有部や家財に被害が生じた際に補償されますが、自然災害などで共用部や建物全体に被害が生じた際は、オーナーの加入している火災保険で補償されます。
また、近隣家屋から火災が発生し、所有の建物に被害が生じた場合、失火者に過失がなければ「失火責任法」という法律により損害賠償請求ができません。そのため、オーナー加入の火災保険で補償を受ける必要があります。日本では、災害大国と呼ばれるほど災害被害が多いため、最悪の場合、アパートを失ってしまう可能性もあります。このような被害への備えとして、オーナー自身も火災保険に加入しておく必要があるのです。融資を受ける条件となる
土地取得やアパート建設の際に、銀行などの金融機関から融資を受ける場合は火災保険の加入が求められます。災害などの有事の際にアパートを失ってしまうと、多額の借金だけが残ってしまい、家賃収入が途絶え返済遅延が発生するリスクがあります。火災保険に加入していれば、アパートの再建費用や建て替え期間中の家賃収入が補償されるため、貸し倒れリスクの恐れがなくなります。そのため、金融機関は火災保険の加入を求めることがあるのです。
融資を受ける際に必要となるだけでなく、こういった不測の事態に備えて火災保険に加入し、なるべくリスクを低減して安定したアパート経営を行っていく必要があります。-
ここまで、火災保険の必要性についてご紹介してきましたが、アパート経営者が加入すべき火災保険には補償範囲や補償対象、特約の種類に応じていくつかの種類に分かれます。
ここでは、火災保険の種類について紹介します。住宅火災保険
住宅火災保険は、専用住宅を対象とした保険です。「火災」「落雷」「破裂・爆発」「風災・雹災・雪災」での被害に対して、「建物」と家財補償を付けた場合は「家財」について補償を受けられます。補償範囲が限られる分、住宅総合保険に比べて保険料は安価に設定されています。
なお、補償対象については「建物のみ」「家財のみ」「建物と家財」から選択することが可能で、近年増えている家具・家電付き物件の場合は「建物と家財」を選択すると良いでしょう。
■補償範囲
・火災
・落雷
・破裂・爆発
・風災・雹災・雪災
■補償対象
・建物のみ
・家財のみ
・建物と家財住宅総合保険
住宅総合保険は専用住宅を対象とした保険です。住宅火災保険に含まれる被害に加え、「洪水・床上浸水」「水漏れ」「物体落下・飛来・衝突」「騒じょう・労働争議・集団行動」「盗難」「水災」も補償範囲に含まれます。
補償対象については住宅火災保険と同様、「建物のみ」「家財のみ」「建物と家財」からの選択となります。住宅火災保険と住宅総合保険は内容が似ているため、同じものと思われる方もいますが、補償範囲が異なるため注意しましょう。
住宅火災保険が必要最低限の補償であるのに対し、住宅総合保険はさまざまなリスクに対し総合的な補償が受けられます。
■補償範囲
・火災
・落雷
・破裂・爆発
・風災・雹災・雪災
・洪水・床上浸水
・水漏れ
・物体落下・飛来・衝突
・騒じょう・労働争議・集団行動
・盗難
・水災
■補償対象
・建物のみ
・家財のみ
・建物と家財普通火災保険
普通火災保険は、店舗や店舗兼用住宅を対象とした保険で、住宅火災保険と同様「火災」「落雷」「破裂・爆発」「風災・雹災・雪災」が補償範囲です。補償対象は「建物」と家財、商品、製品、設備、什器、備品などの「収容動産」です。住宅火災保険が居住用の住宅物件が対象だったのに対し、普通火災保険は店舗を含む一般物件を対象としています。
■補償範囲
・火災
・落雷
・破裂・爆発
・風災・雹災・雪災
■補償対象
・建物
・収容動産-
アパート経営者が加入する火災保険では、自然災害や放火、延焼などで共用部や建物全体への被害に対して補償が受けられます。補償範囲や補償対象によってさまざまな保険が提供されており、専用住宅向けでは、ベーシックな「住宅火災保険」や、補償範囲が広い「住宅総合保険」があるとご紹介しました。
なお、それぞれの保険は補償範囲と補償対象が明確に定められていますが、それらの補償は必ずしもアパート経営にとって万全ではありません。アパートを経営する上での特有のリスクについては、特約を付帯することで対応することが可能です。この章では「施設賠償責任特約」「家賃補償特約」「家主費用特約」についてご説明します。施設賠償責任特約
施設賠償責任特約は、オーナーが建物に起因する何らかの被害を負った方に支払う損害賠償費用を補償する特約です。建物の老朽化や不備が原因で入居者や通行人がケガなどを負った場合、建物のオーナーには法的な損害賠償責任があります。
たとえば、手すりが劣化して入居者の転落事故が起きた場合や、外壁や看板などに不備があり崩落事故が起きて通行人がケガをした場合などが挙げられます。施設賠償責任特約は、こういった建物の老朽化や整備不良に起因する事故の賠償費用を補償します。
建物の老朽化による事故のリスクはアパート経営の期間が長くなればなるほど高まるため、長期間に渡りアパートを経営される場合や、築年数の経過した物件を所有されている場合は積極的に付帯を検討しましょう。家賃補償特約
家賃補償特約は、自然災害や放火、延焼などの被害によって継続した居住が難しく、復旧までに時間を要する場合に、契約で定められた期間で家賃収入を補償してくれる特約です。たとえば、アパートの一室で火災が発生し、隣室や上下階の住人にも影響が及んだ場合、家賃収入の損害は大きくなります。この際、アパート建設時にローンを組んでいれば、返済が滞ってしまったり、アパート経営そのものが立ち行かなくなってしまったりする恐れもあるでしょう。
このような災害が発生しなければ取得できたであろう家賃収入について、契約時の家賃月額を上限に、定められた期間、補償してくれるのが家賃補償特約です。
この特約は、アパート取得の際に融資を受けている方にとって、特におすすめと言えるでしょう。ただし、火災保険の種類によっては契約時の空室率が5割を超えている場合は付帯することができないなどの条件が設けられている場合もあります。家主費用特約
家主費用特約は、自殺や孤独死、犯罪などによって死亡事故が発生した際に、それに伴う空室期間の長期化や家賃の減収などの経済的損失を補償する特約です。そのほか、居室内の清掃や遺品整理など部屋の原状回復にかかる費用も、補償の対象です。また、該当する部屋だけでなく、上下階や隣室などに空室が発生した場合も補償されます。
たとえば、高齢で一人暮らしの入居者が居室内で孤独死してしまった場合、遺品整理や清掃などをオーナーの持ち出しで実施しなければならず、費用負担は大きくなることが考えられます。また、前住人が亡くなっていることで印象が悪くなり、家賃を下げなければ新規入居者を獲得できない恐れもあるでしょう。家主費用特約は、このような経済的損失を補償します。
高齢化が進行している日本において、単身者向けのアパートを経営しているなら、この特約の付帯を検討しましょう。ただし、補償対象は賃貸借契約が結ばれている住戸のみで、空室での犯罪などは補償されないので注意が必要です。-
火災保険以外にも、さまざまな特約があることがわかりました。しかし、保険金額は、契約によっても変わります。
保険金額とは、有事の際に保険会社から支払われる保険金のことです。似たような用語に「保険価額」がありますが、こちらは補償の対象、すなわち建物を金銭評価した金額です。保険価額には「新価」と「時価」があり、新価は被害を受けた建物を再度建てるのに必要な金額、時価は新築時の金額から経年での減少額を差し引いた金額を指します。
保険金額は、保険価額をもとに設定され、保険価額より保険金額を低く設定した場合を「一部保険」、保険価額より保険金額を高く設定した場合を「超過保険」、保険価額と保険金額を同等に設定した場合を「全部保険」と言います。超過保険を掛けた場合でも新価以上には補償されないため、一部の保険金は無駄になってしまいます。無駄なく十分な補償を受けるには、全部保険を基準に保険金額を設定すると良いでしょう。-
ここまで、保険の種類や支払い方法の違いを見てきました。実損てん補である「全部保険」がおすすめとご紹介してきましたが、火災保険は、一般的には「建物時価の80%相当が良い」と言われています。
その理由として、保険会社の多くが一部保険の比例てん補方式の分母80%を乗じることが挙げられます。
ただし、火災保険料の相場は、場所と建築構造などの条件で異なります。各都道府県で災害発生リスクが異なるためです。そのため、近年では、ハザードマップによって保険料に差をつける動きも出てきています。
また、建築構造は「M構造(マンション構造)」「T構造(耐火構造)」「H構造(非耐火構造)」の3種類でも、保険料が異なります。これは、木造の一戸建てよりRC構造(鉄筋コンクリート構造)のマンションのほうが低いリスクであることが理由として挙げられます。
このように、火災保険に加入する際は、物件の所在と構造を確認したうえで相場比較を行うと良いでしょう。-
火災保険などの保険は加入しておく方が良いことをご紹介してきましたが、多種多様な保険会社からご自身の運営方法に合った会社を見つけるのは難しいものです。
不動産管理会社などの専門家に相談することも良いですが、まずは、確認しておくべきポイントを頭に入れておきましょう。補償対象物を確認する
火災保険の補償対象は、契約時に選択することになります。冒頭でご紹介した、「建物のみ」「家財のみ」「建物と家財」から選択します。基本的に、火災保険は建物を対象とした保険ですが、「家財補償」を付けた場合、災害発生時に建物だけでなく被害を受けた家財一式も補償の対象となります。そのため、高価な家財や高額貴金属などを別枠で補償対象に加えることも可能です。
なお、専用住宅のアパート経営者は「建物のみ」を選択することが一般的ですが、家具・家電付き物件や建物内にオーナーの自宅や管理人室を併設している場合は「建物と家財」を選択すると良いでしょう。店舗や店舗兼用住宅向けの「普通火災保険」や「店舗総合保険」については、家財だけでなく商品や製品、設備、備品、什器などの収容動産も補償の対象となることが一般的です。補償範囲を確かめる
火災保険の料金は、場所やアパートの構造によっても異なりますが、補償範囲によっても変動します。前述したような、住宅火災保険や普通火災保険は、比較的最低限の補償対象となっているため、保険料は安価に設定されています。
一方、専用住宅向けの住宅総合保険や、店舗や店舗兼用住宅向けの「店舗総合保険」は、総合型の火災保険で、従来型補償範囲に加え、洪水・床上浸水、水漏れ、物体落下・飛来・衝突など、さまざまな被害も補償範囲に含まれます。そのため、従来型の火災保険より、保険料は高く設定されているのです。
総合型の保険はコストがかさみますが、近年増加している集中豪雨への備えや、河川や海などの近辺の物件の場合は検討をおすすめします。保険適用期間をチェックする
火災保険の保険期間は、最短1年、最長10年が一般的です。以前は、最長35年の契約が可能でしたが、近年の災害多発により、2015年に最長10年に改められました。
10年ほどの長期契約の場合、単年契約より1年あたりの保険料が割安になりますが、「契約途中で補償対象や補償範囲の変更ができない」「一度に多額の支払いが必要になる」などのデメリットも挙げられます。
一方、短期契約の場合は、1年あたりの保険料は割高になるものの、都度補償対象や補償範囲を見直せるのがメリットです。所有物件の特性や経営状況を鑑みて保険期間を決定すると良いでしょう。
なお、契約期間は、2022年10月には最長5年への改定が予定されています。火災保険料は増加傾向にある
近年の災害多発により、火災保険料は増加傾向にあります。自然災害の確率が高まると、建物への被害リスクも高まるためです。
損害保険料算出機構は2021年6月16日、火災保険料の算出目安である参考純率を全国平均10.9%引き上げると発表しました。改定の主な背景としては、近年の災害多発による保険会社の保険金支払いの増加と、経営環境の悪化を反映したことを理由に挙げています。
火災保険料は、直近5年間で3度値上げされており、2022年10月にも保険料の引き上げが予定されています。この火災保険料値上げの傾向は今後しばらく続くと考えられます。-
この記事ではアパート経営者の方に向け、火災保険加入の必要性をご説明しました。火災保険の種類や特約に応じて、補償対象や補償範囲、保険料が異なります。
また、火災保険料は年々増加しており、今後しばらくこの傾向が続くとも予想されています。火災保険を検討する際は、不動産会社などの専門家に相談するのも一つの手と言えるでしょう。
なお、アパートを含む不動産のご相談は、当社でも承っています。アパート経営に関するお悩みや、保険の検討など、ぜひお気軽にご相談ください。関連記事
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