アパートローンの相続には対策が必要!選択肢やトラブルの事例を紹介

アパートローン(アパート経営)の相続が想定される場合、必要な対策や選択肢を理解しておくのは重要です。相続発生時はアパート経営の有無によらず、相続や相続人間で遺産分割が難航するケースは少なくありません。被相続人(故人)の存命中に相続の方針をまとめておくと、相続発生時の負担を減らせます。今回は、アパートなどの収益物件を相続する見通しがある方に向け、アパートローンの相続に必要な対策、選択肢を解説します。

不動産経営の成功率は?!

アパートローンの相続に対策が必要な理由

  • アパートローンの相続に対策が必要な理由
  • アパートローンを相続するには被相続人の財産、将来的な見通しも含めローン返済や修繕にも対策が必要です。相続人が複数名の場合、各共同相続人が法定相続分に応じて引き受ける義務があります。まずは大まかな相続の仕組みを解説します。

  • 相続するプラスの財産

    相続とは被相続人が所有していた財産を相続人が引き継ぐことです。財産には、プラスとマイナスの財産が存在します。プラスの財産は、以下のような財産です。

    土地(宅地、農地、山林、池沼など)
    土地の上にある権利(借地権、借家権、地上権など)
    家屋や設備(住宅、マンション、店舗、工場、付属設備、賃貸に出していた収益物件など)
    現金、預貯金、貸金庫の財産
    有価証券(株式、社債、国際証券)
    債権(貸付金、立替金)
    知的財産権(著作権、工業所有権など)
    事業用財産(機械器具、個人事業のために使う売掛債権など)
    家庭用財産(自動車、貴金属、絵画骨董品など)
    みなし相続財産(生命保険金、死亡退職金など)
    その他(ゴルフ会員権、占有権、形成権など)

    また、アパート経営のような物件の大家という地位も相続されます。

  • 相続するマイナスの財産

    被相続人がアパート経営などの不動産経営を行っていた場合、以下のローン残債はマイナスの財産です。

    借入金(住宅ローン残高債務、クレジット残債務、車などの割賦契約月割賦金)
    未払金(貸借料、水道光熱費、リース料など)
    敷金、保証金、預り金
    買掛金、前受金
    保証債務、連帯債務
    租税公課(所得税、消費税、国民健康保険料)
    葬式費用(相続税上の債務控除対象)

  • アパートローンの返済も相続対象

    アパート経営を相続する場合、ローンの返済も相続に含まれます。ローン残債がない場合、遺産分割協議書等原因証書を作成し法務局へ提出、その後相続登記申請を行えば物件の名義変更は完了します。しかし、ローン残債がある場合、債権者である金融機関から変更を希望する名義人(連帯保証人など)の審査、承諾を受ける必要があります。つまり、相続人同士の話し合いや合意だけでは済まないのです。金融機関との協議や承諾について、金融機関側はビジネスライクのため、相続人側の事情を汲み取ってくれるとは限りません。

  • 団体信用生命保険(団信)について

    アパートローンなど不動産投資ローンを組む際、団体信用生命保険(団信)の加入を検討するでしょう。主債務者が返済不能となった時にローン残債相当額の保険金が下りるため、金融機関の貸倒れリスクと相続人の返済義務を防ぐ狙いがあります。アパートローンには団信付きのローンもあり、団信なしのローンより金利が高めに設定されているのが特徴です。また、ローンによっては一度加入してしまうと中途解約できないものや、残債がなくなるために納める相続税の額が高くなるものがあります。相続税対策でアパート経営を行う場合、団信に加入してしまうと税金対策にはならないため気をつけましょう。

  • 相続対策を目的としたアパートローンに注意

    近年、相続税の負担軽減を目的としたアパート経営が注目されていますが、相続対策を意識したアパートローンを相続する場合は特に注意が必要です。アパート経営は、収益物件として資産価値と借入残高のバランスが取れているかどうかが重要です。バブル期に建てられたアパートの場合、当時は売却も有利な市場であったかもしれません。しかし、相続時点の現在は空室が目立っていたり、担保割れが起きたりしているでしょう。家賃収入のみでローン返済が困難な場合、早急なローンの組み換えや繰り上げ返済などの対策が必要です。複数の物件を所有していた場合、どこかの物件のマイナスを他の物件のプラスと相殺している恐れもあります。そのため、安易に相続という判断をせず、物件ごとのキャッシュフローを慎重に見極めるようにしましょう。

アパートローンの相続対策における選択肢

  • アパートローンの相続対策における選択肢
  • アパート経営のローン返済も相続する場合、通常の不動産相続とは異なる手続きが必要です。ここでは、アパート相続の仕組みや選択肢を解説します。

  • 不動産財産の相続は難しい

    まずは、相続全体のスケジュールを把握しておきましょう。相続人の関係性や人数、居住地によってはスムーズな話し合いができないケースもあります。期限については、相続人の他界翌日から準確定申告までは4ヶ月、相続税の納付までは10ヶ月以内と定められています。 相続全体の主なスケジュールは以下の通りです。

    ・被相続人の他界
    ・遺言書の有無の確認
    ・相続財産の調査、相続人の確定
    ・相続放棄や限定承認の検討と判断
    ・準確定申告
    ・遺産分割協議、遺産分割協議書作成(弁護士もしくは司法書士に相談)
    ・相続登記もしくは名義変更の上、売却
    ・相続税の申告と納付(現金納付が原則)

    法定効力のある遺言書がある場合、遺言書の内容に従い財産を分割します。遺言書と異なる方法で財産を分割する場合や、遺言書がない場合は遺産分割協議書を作成します。ローンを含めアパート経営を相続する際は、名義人の変更時に金融機関からスムーズに承認が得られないケースもあるため注意が必要です。なお、準確定申告とは亡くなった方の確定申告です。その年における被相続人の年始から死亡日までの期間、家賃収入を含む収入の確定申告となります。準確定申告を行えば納税した額を相続税の債務として差し引けるため、忘れずに行いましょう。

  • (原則)アパートローンは連帯保証人が相続する

    アパートローンは原則、ローンの連帯保証人が相続します。しかし、連帯保証人の返済能力やアパートの収益性に難があると判断された場合、追加の連帯保証人を立てる必要が生じます。連帯保証人は、相続放棄をしてもローンの債務は免除されませんが、団体信用生命保険に加入していた場合は保険金をローン残債に充当できるため、ローン自体が終了となるのです。被相続人の存命中に金融機関に団体信用生命保険への加入の有無を確かめたり、設定されている連帯保証人に返済能力、アパートの収益性をチェックしてもらったりしておくと良いでしょう。アパートを相続する方が遺言書で指定されていたり、遺産分割協議で相続する人が決まっていたりしたとしても、債務者である金融機関の承諾がなければ変更、相続はできません。

  • 相続せずに売却という選択肢もある

    アパート経営を相続しない場合、入居者が居住したまま物件を売却できます。アパートローンは、安定した家賃収入を得られる反面、経営には多くの費用や労力が必要です。そのため、慢性的に空室が目立つ場合や、修繕が必要な設備の数次第では売却をおすすめします。相続人全員が同意すれば、法定相続分通りの共有状態のまま手続きを行えます。売却金でローンが完済できなくとも、売却せずに返済するよりは負担を減らせるでしょう。

アパートローンの相続(名義変更)の流れ

  • アパートローンの相続(名義変更)の流れ
  • アパートローンを相続する場合、ローンの名義変更手続きが必要です。アパートの収益性や相続する人の返済能力次第では、スムーズに手続きが進まないケースもあります。ここでは、手続きの主な流れを見ていきましょう。

  • 連帯保証人の確認

    アパートローンを相続する場合、まずは連帯保証人を確認します。主債務者が返済できなくなった場合、ローンの返済義務は連帯保証人に生じるため、相続放棄をしても返済は免除されません。返済を回避するには、アパート経営を終了し物件の売却が必要です。連帯保証人には「アパート経営を継承する能力がある法定相続人」「事業継承能力、収入がある親戚や友人」などが挙げられます。連帯保証人は主債務者と同等の返済義務があります。もし複数の連帯保証人が立てられていたとしても、金融機関側が誰か一人に返済を求めてきた場合、その連帯保証人が返済することになります。

  • 金融機関の審査を受ける

    アパートローンの相続人が決まったら金融機関の審査を受け、債務者の変更に承諾を得ます。新規融資同様、審査を経て新たな金銭消費貸借契約を締結する手続きです。金融機関としては貸倒れを防ぐため、必要に応じて追加の連帯保証人を求める場合があります。承諾が得られるまでは、法定相続分に応じて全ての相続人が返済義務を背負っている状態が続きます。

  • 債務者変更登記申請を行う

    金融機関の審査が通れば、手続きに必要な書類を受け取り債務引受契約を交わします。その後、管轄の法務局で債務者変更登記申請を行います。アパートに抵当権が設定されていれば、抵当権の債務者変更登記申請が必要です。債務者変更登記申請は通常、金融機関が紹介する司法書士もしくは相続人が司法書士に依頼するのが通例です。なお、債務者変更登記申請の前にアパートの相続登記申請が済んでいなければなりません。まだ行っていない場合、一緒に債務者変更登記を依頼するとスムーズです。

  • 相続した後の見通しも重要

    アパート経営のような不動産投資は、将来的な出口戦略を明確にしておくのを忘れてはいけません。この際、これまでの収益を減らさず、いかに物件を高値で売却できるかが重要です。現在は安定した収益物件でも、売却時に大きな損失を生む恐れもあります。アパートは「相続税改正」「不動産投資ローン金利の低下」などで注目されるようになった一方、人口減少や空き家の増加は経営上の深刻なリスクといえます。築年数が経過するほど入居者募集は難化し、修繕の必要性が高まるのも事実です。入居者がいなければ家賃収入も得られず、経営自体が困難となるでしょう。耐用年数経過後は減価償却が行えず税金の負担も増え、キャッシュフローは悪化しやすくなります。物件周辺の需要に合わせた経営が現実的に可能であるか、専門家と相談しながら検討するのが得策です。

アパート経営を行っていた被相続人の相続発生時のよくあるトラブル

  • アパート経営を行っていた被相続人の相続発生時のよくあるトラブル
  • アパート経営を相続する場合、アパートローンの返済に関係したトラブルも少なくありません。ここではトラブルの事例と、対策方法を紹介します。

  • アパートローンの名義変更ができない

    アパートローンの相続時、ローン債務者の名義変更は金融機関の承諾がなければ行えません。金融機関は、債務者からの債権の回収可能性で判断します。相続人の返済能力やアパートの収益性次第では、相続人の希望通りローンを相続できないケースがあります。また、連帯保証人を追加するよう求められることもあるでしょう。手続きが滞れば、ローン返済にも影響が出ます。将来的にアパートローンを相続する見通しがあれば、あらかじめ金融機関に相談しておくのが賢明です。現在のアパートの経営状況や連帯保証人、名義変更が可能かを相談できるため、相続発生時の手続きの負担を減らせます。

  • アパートローンの返済が滞る

    アパートローンの返済が滞った場合、金融機関からの督促や残債の一括返済要求、もしくは任意売却となったり競売にかけられたりします。家賃収入がローン返済を上回っている場合を除き、返済資金はゆとりをもって確保しておくことが大切です。アパートを手放してもローンを返済しきれなければ、自己破産を行う事態にも起こり得ます。また、返済が滞ると精神的にも大きな負担となり、社会的にも影響を及ぼすでしょう。遺産分割協議が難航すれば、不動産を処分(売却)できないのに返済を続ける義務が発生します。つまり、相続の手続きを行いながら賃料の管理と返済という2つのお金の問題を抱えることになるのです。

アパートローンの相続が想定される時の事前準備

  • アパートローンの相続が想定される時の事前準備
  • まだ先のように思っていても、相続は突然発生します。そのため、被相続人の存命中にできる限りの相続の事前準備を行っておくことが重要です。最後に、相続に備えた主な準備を紹介します。

  • 遺言書作成

    ローン返済を含めてアパート経営を相続する場合、被相続人の遺言書が作成されていると相続の手続きをスムーズに進められます。アパートを相続もしくは売却するかを判断するには、物件の収益性や連帯保証人を確かめましょう。存命中に経営しているアパートの情報を把握できていれば、相続を話し合う段階になった時に発生し得るトラブルを防げます。確実に効力を持つ遺言書を作成するためにも、遺言書は全国にある公証役場で公正証書遺言書を作成しておくと安心です。

  • 金融機関の口座凍結対策

    アパート経営を行っていた被相続人の口座は、金融機関に被相続人が亡くなった旨を伝えると凍結されます。凍結されてしまうと、入居者からの賃料の振り込みが行えません。また、引き出しができないため、口座の残高をローンの返済資金に充てられなくなります。アパートを相続したら口座が凍結される前に、入居者に賃料の振込先変更依頼の変更通知書を送り、振込先を変更してもらいましょう。相続人が決定するまでの期間は、相続人の代表者の口座に賃料の振込先を変更します。

  • 専門家へ相談できる体制を整える

    被相続人がアパート経営を行っているかを問わず、相続に関しては専門家に相談できる体制があると良いでしょう。ローンの返済が残ったアパートを相続することになれば、毎月の返済が必要です。返済が滞れば金銭的な困窮を招き、社会生活にも深刻な影響を及ぼしかねません。アパート経営を相続する見通しがある場合はできる限り早く税理士や弁護士、もしくは相続業務の経験が豊富な司法書士に相談できる体制を整える必要があります。なお、税理士に相談する際は相続業務に強い税理士を探しましょう。税理士の業務は幅広く、法人の決算業務や個人事業主の所得税関連業務をメインに扱っている場合、個人の相続税に不慣れなこともあるからです。「相続専門」「相続に強い」と掲げているような税理士に相談すれば、過去の経験からスムーズな解決策を提案してもらえます。相続の問題はケースバイケースであり、複雑な関連法規が関係します。相続発生時の負担を少しでも軽減するため、専門家のアドバイスを参考に余裕をもった見通しを立てましょう。

まとめ

  • まとめ
  • アパート経営に対する相続人の意思、状況はさまざまです。しかし、何も対策を講じなければトラブル発生のリスクにつながります。また、突然ローンの返済を行うことになれば、相続人に金銭的な困窮も招きかねません。スムーズな相続のためにも、専門家を交えつつ被相続人や相続人間で方向性を決めておくのが得策です。

FAQ

  • Qアイコン 相続財産について教えてください。

    相続とは被相続人が所有していた財産を相続人が引き継ぐことです。財産には、プラスとマイナスの財産が存在します。それぞれ例を挙げています。
    詳細はこちらを参考にしてください。

  • Qアイコン 団体信用生命保険(団信)とは何ですか?

    主債務者が返済不能となった時にローン残債相当額の保険金が下りるため、金融機関の貸倒れリスクと相続人の返済義務を防ぐ狙いがあります。

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アレップス コンテンツ編集部

アレップス コンテンツ編集部では、アパート経営や不動産投資に関するお悩みを解決すべく日夜スタッフが情報の最新かつ濃密な記事の発信を行っています!

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