小規模宅地等の特例を詳しく解説!適用要件や必要書類

不動産を相続する可能性のある方にとって、小規模宅地等の特例は相続税を軽減できる重要な制度です。しかし、適用要件や必要書類が複雑で、制度を十分に理解できていない方も少なくないでしょう。本記事では、小規模宅地等の特例の概要、適用要件、必要書類、計算例までをわかりやすく解説します。

小規模宅地等の特例とは

  • 小規模宅地等の特例とは
  • まずは、小規模宅地等の特例の概要や適用要件について理解を深めましょう。全体像を把握することで、節税や生前対策につながる可能性があります。

  • 特例の概要

    小規模宅地等の特例とは、故人が住んでいた自宅や事業用の土地を相続する際、一定の要件を満たすことで評価額を減額できる制度です。相続税は財産の評価額を基に計算されるため、土地の評価額が下がれば相続税額も下がります。なお、借地権や地上権などの土地の権利にも適用可能です。

  • 特例が設けられている背景

    特例が設けられた背景は、高度経済成長期にまでさかのぼります。当時は地価の急騰により、相続税の負担が非常に重くなり、多くの家庭がやむなく土地を手放さざるを得ない状況にありました。自宅や事業用の土地を失うと、生活の安定や事業の継続に大きな影響が生じます。こうした事態を防ぐために、相続税の負担を軽減し、土地を維持できるようにすることで、残された家族の生活や事業を守ることを目的として、小規模宅地等の特例が設けられました。現在も相続税対策として非常に重要な制度となっています。

  • 基本的な適用要件

    基本的な適用要件は以下の2つです。
    ・故人の自宅または事業として使っていた土地
    ・その土地に建物や構築物がある
    基本的な適用要件に加え、土地や相続人の種類によって限度面積や軽減度合いが異なります。

土地別の特例の判定

  • 土地別の特例の判定
  • 土地によって、特例が適用される土地の面積や減額の割合は異なります。土地の種類は、「特定居住用宅地等」「特定事業用宅地等」「特定同族会社事業用宅地等」「貸付事業用宅地等」の4つです。

  • 特定居住用宅地等

    特定居住用宅地等とは、自宅として使われていた土地です。故人やその同一生計親族が住んでいた土地が対象となります。一方、別荘といった、実際の生活拠点でない土地は対象となりません。
    同一生計親族とは、日常の生活費を共有している6親等以内の血族または3親等以内の姻族です。基本的に故人と同居していた親族が該当するほか、仕送りや療養費などを送金している実態があれば該当する場合があります。
    適用される土地の面積は330㎡(約100坪)までです。330㎡を超える部分は通常の評価額として計算されます。減額の割合は80%です。

  • 特定事業用宅地等

    特定事業用宅地等とは、事業で使われていた土地です。不動産貸付業を除く、故人やその同一生計親族が店や工場など事業に使っていた土地が対象となります。
    事業用宅地等の特例では、相続開始前に一定期間その土地を事業用として使用していたことが必要です。ただし、相続開始前3年以内に新たに事業用として使用を開始した土地でも、一定の要件を満たせば特例の対象となる場合があります。具体的には、故人がその土地を事業に使用していたことや、事業継続の意思が認められるかどうかなどが判断基準となります。
    また、その土地にある事業用の建物や減価償却資産の価額が相続時の価額の15%以上である場合、相続開始前3年以内でも例外的に対象となります。
    適用される土地の面積は400㎡(約120坪)までです。400㎡を超える部分は通常の評価額として計算されます。減額の割合は80%です。

  • 特定同族会社事業用宅地等

    特定同族会社事業用宅地等とは、同族会社の事業で使われていた土地です。同族会社が貸付事業以外の事業に使っていた店や工場などの土地が対象となります。なお、同族会社とは、特定の株主や親族などが発行済み株式の50%超を所有する会社です。
    同族会社は、相続開始前に土地・建物を有償で賃借している必要があります。例えば、建物の所有者が特定同族会社の場合、故人はその法人から地代を受け取っていなければなりません。所有者が故人の場合は法人からの家賃の受領、故人と同一生計親族の場合は法人から家賃を受け取っている必要があります。
    適用される土地の面積は400㎡(約120坪)までで、400㎡を超える部分は通常の評価額として計算されます。減額の割合は80%です。

  • 貸付事業用宅地等

    貸付事業用宅地等とは、土地を第三者に貸す、土地に賃貸アパートを建てるなど不動産貸付業に使われていた土地です。故人やその同一生計親族が不動産貸付業に使っていた土地が対象となります。
    駐車場や駐輪場は土地の上に構築物がある場合のみ特例の対象で、いわゆる青空駐車場は対象外です。また、相続開始前3年以内に新たに貸付事業を開始した土地も原則として対象となりません。
    適用される土地の面積は200㎡(約60坪)までです。200㎡を超える部分は通常の評価額として計算されます。減額の割合は50%です。

特例の適用対象となる人

  • 特例の適用対象となる人
  • 土地だけでなく、相続人によっても適用要件は異なります。特定居住用宅地等の場合、適用対象となる人は配偶者・同居親族・別居親族の3つに分類されます。

  • 特定居住用宅地等の場合

    特定居住用宅地等では、以下の3つの区分に分けられます。
    配偶者
    原則として特別な要件はなく、基本的な適用要件を満たしていれば特例を利用できます。
    同居親族
    同居親族は、故人が住んでいた建物で共に生活していた親族を指します。親族とは、6親等以内の血族または3親等以内の姻族です。相続開始前から相続税の申告期限までその土地を持ち続け、住み続ける必要があります。
    別居親族(家なき子特例)
    別居親族は以下の要件を全て満たす必要があります。
    ・故人に配偶者がいない
    ・居住制限納税義務者ではない
    ・非居住制限納税義務者で日本国籍を持っている
    ・故人の自宅に一緒に住んでいた相続人が一人もいない
    ・相続開始前3年以内に、自分·配偶者·3親等以内の親族、または特別な関係のある法人が所有する家に一度も居住していないこと
    ・自身が住んでいる家を過去に一度も自分名義で持っていない(投資用物件のように居住用ではない不動産は例外)
    ・取得した宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで持ち続けている

  • 特定居住用宅地等以外の場合

    特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等・貸付事業用宅地等では、親族が適用対象です。相続開始前から相続税の申告期限までその土地を持ち続け、住み続けていれば要件を満たします。

適用要件の注意点

  • 適用要件の注意点
  • 適用要件は土地と相続人の種類によって変わりますが、例外的なケースでは追加の要件が定められます。また、共有相続やマンションの場合は特例を十分に活用できないかもしれません。

  • 二世帯住宅の特例適用

    故人と二世帯住宅に住んでいた場合、内部で行き来できるかどうかにかかわらず同居親族と扱われます。以下の要件を満たしていれば、同居親族として特例の適用が可能です。
    ・一つの建物に住んでいる
    ・土地の名義が故人である
    ・故人に家賃を支払っていない
    ただし、区分所有登記をしている場合は同居親族とみなされません。区分所有登記とは、各部屋を独立した不動産として所有者ごとに登記する制度になります。将来の相続に備えるには区分合併登記を検討するのも一案です。

  • 高齢者施設入居時の特例

    故人が高齢者施設に入居していて自宅が空き家となっていた場合でも、以下の要件を満たしていれば特例の適用が可能です。
    ・施設入居後に自宅を賃貸に出していない
    ・施設入居後に生計を別にしていた相続人がその自宅に新たに住んでいない
    ・故人が要介護認定や要支援認定や障害者支援区分の認定を受けて施設に入居した(対象となる施設は老人福祉法等で定められた種類に限られるため、事前に確認しておくと安心です)
    また、入院により自宅が空き家となっていた場合もその自宅が他の用途に使われていない限り、故人の生活拠点は引き続き自宅にあったとみなされます。そのため、入院期間の長さにかかわらず特例の適用が可能です。

  • 共有土地の特例適用

    複数人で土地を共有相続した場合、条件を満たす相続人の持分の範囲で特例を適用できる場合があります。例えば、2人兄弟で実家の土地をそれぞれ半分ずつ共有で相続したケースを考えましょう。故人と同居していたのは兄のみで、弟は別居していたものと仮定します。
    この場合、特例の適用要件を満たしているのは兄のみであるため、兄の持分には特例が適用されますが、弟の持分には特例が適用できません。

  • マンションの土地における特例

    マンションでも特例は適用可能です。ただし、特例は土地にのみ適用され、建物には適用されません。一般的にマンションの土地は各部屋の所有者全員で分けて所有しているため、評価における土地部分の価値は戸建てよりも低くなりがちです。
    例えば、分譲マンションで区分所有登記されている一室に故人が住んでいた場合、その一室に相当するマンションの敷地部分のみが対象となります。そのため、戸建てよりも特例のメリットは薄いかもしれません。
    なお、2024年1月1日以降の相続・贈与から、分譲マンションの相続税評価額が時価の6割以上となるルールが適用されました。特に、タワーマンションのように実勢価格と評価額が大きく離れている物件では相続税が増えます。税制改正により評価額が引き上げられているため、少しでも評価額を下げたい場合は特例を活用した方がよいでしょう。

  • 配偶者居住権と特例

    配偶者居住権とは、配偶者が亡くなった後も残された配偶者が住み慣れた自宅に無償で住み続けられる権利です。老後の生活を安定させるための制度で、2020年施行の民法改正で新設されました。
    配偶者居住権自体は建物の権利であるため、原則として特例は適用されません。しかし、その土地である敷地利用権は特例の対象となるため、要件を満たせば特定居住用宅地等として特例を適用できます。
    配偶者居住権による敷地利用権は要件の定められていない配偶者が取得するため、特例の適用が可能です。敷地利用権を故人の同居親族が取得した場合も、特定の要件を満たすことで特例が認められます。

特例を適用した場合の相続税

  • 特例を適用した場合の相続税
  • ここでは、特例を適用した場合の相続税が実際にどのくらい軽減されるのかを確認してみましょう。
    例えば、特定居住用宅地等に該当する土地で、面積が300㎡で土地評価額が3,000万円の場合、減額分は3,000万円×80%で2,400万円です。この場合、課税対象は600万円になります。
    面積が500㎡で土地評価額が5,000万円の場合、減額分は5,000万円×330㎡/500㎡×80%で2,640万円です。この場合、課税対象は2,360万円になります。
    また、貸付事業用宅地等と特定居住用宅地等・特定事業用宅地等を併用して適用する場合、限度面積は200㎡です。この場合は最も金額が減額されるように選択し、特例を適用します。
    例えば、以下の2つの土地があると仮定します。
    ・土地A:貸付事業用宅地等、面積200㎡、土地評価額2,000万円
    ・土地B:特定事業用宅地等、面積400㎡、土地評価額4,000万円
    それぞれの区分に応じて減額率を適用した場合、土地Aの減額分は1,000万円、土地Bの減額分は3,200万円です。土地Bに特例を適用した方が有利なため、土地Aに特例は適用されず、通常通り課税されます。
    なお、実際の計算では各種控除によって相続税額が下がる可能性もあります。財産や相続人が複数の場合もあるため、正確な税額が知りたい場合は税理士に相談しましょう。

申告書提出までの大まかな流れ

  • 申告書提出までの大まかな流れ
  • 申告書提出までの流れは主に書類の提出・確認、財産調査、遺産分割と名義変更、相続税の申告・納付に分けられます。以下の流れを参考に、相続税の申告・納付を行いましょう。

  • 死亡届の提出

    医師から死亡診断書を受け取り、市区町村役場へ死亡届を提出します。これは死亡の事実を知った日から7日以内に行わなければなりません。この手続きによって戸籍に死亡の事実が記載され、正式に相続が開始されます。

  • 遺言書の確認

    故人が生前に遺言書を作成していたかどうかを確認します。遺言者自身が作成した自筆証書遺言が見つかった場合は勝手に開封してはならず、家庭裁判所での検認が必要です。公証役場にて公証人が作成する公正証書遺言を探す場合は、遺言検索システムを利用しましょう。

  • 相続人の確定

    誰が法定相続人になるのかを確定させるため、故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を収集しましょう。遺産と借金のどちらが多いかも調査し、負債が残る場合は相続放棄や限定承認などの手続きを家庭裁判所に申し立てる必要があります。なお、この手続きは相続開始を知った日から3か月以内です。

  • 相続財産の調査

    特例の適用対象となる土地を含め、全ての相続財産を洗い出して評価額を算出します。具体的には、現金や預貯金、不動産や有価証券などです。
    また、借入金や未払金などの債務も洗い出し、財産目録を作成します。法的な期限は定められていませんが、できるだけ早く済ませる必要があるでしょう。

  • 準確定申告

    準確定申告とは、年の途中で亡くなった人の1月1日から死亡日までの所得を相続人が代わりに確定申告することです。故人が生前に事業を行っていたり不動産所得を得ていたりした場合、準確定申告が必要になります。期限は相続開始を知った日の翌日から4か月以内です。

  • 遺産分割協議

    遺言書がない、または遺言書と異なる分け方をする場合、誰がどの財産を取得するかを相続人全員で話し合う遺産分割協議を行います。小規模宅地等の特例では、要件を満たす人がその土地を相続する必要があるため重要です。
    全員の合意が得られたら、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成し、全員が実印を押印します。なお、遺産分割協議書は申告時の添付書類として必要です。

  • 相続登記の申請

    相続登記とは、不動産の所有者が亡くなった際に名義を故人から相続人へ変更する手続きです。2024年4月1日から義務化され、不動産取得を知った日から3年以内に申請しなければなりません。正当な理由なく放置すると10万円以下の過料が科される恐れがあるため、司法書士への相談を検討してもよいでしょう。ちなみに、2024年4月1日より前に発生していた相続についても義務化の対象となりますが、その場合は令和9年3月31日(2027年3月31日)までに登記すれば猶予期間内となります。

  • 相続税の計算

    財産評価額が判明し、誰が何を取得するかが決まったら、具体的な相続税額を計算します。ここで特例を適用し、土地の評価額を減額したうえで課税対象を算出します。特例を適用した結果、課税価格が基礎控除額である3,000万円+600万円×法定相続人の数を下回る場合、相続税は発生しないと考えられます。

  • 申告書の作成・提出と納付

    必要書類をそろえて申告書を作成し、税務署に提出します。申告書には第1~15表までありますが、全てを提出する必要はありません。第1表は最終的な相続額や税額を記載するまとめの書類です。財産評価に関する第9~15表から書き始めると、まとめの第1表を書きやすくなります。
    なお、特例を利用するためには、第11・11の2表の付表1が必要です。特例を適用する宅地の面積や評価額などを記載し、土地を相続した全ての相続人の氏名を記入し、特例適用への同意を示しましょう。
    付表1で計算した特例適用後の評価額を第11表に転記し、それらを基に最終的な税額を算出します。期限までにその税額を納付すれば、手続きが完了します。期限は故人が死亡した翌日から10か月以内です。

特例を利用するために必要な書類

  • 特例を利用するために必要な書類
  • 特例を利用するためには、必要書類を添付して相続税申告書を提出する必要があります。ケースによって必要書類が増える場合もあるため、注意が必要です。

  • 共通して必要になる書類

    いずれのケースでも、以下の書類は共通して必要になります。
    ・故人の相続関係を証明する書類
    ・遺言書または遺産分割協議書
    故人の相続関係を証明する書類では、故人の出生から死亡までの戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本、または法定相続情報一覧図のどちらかが一般的です。法定相続情報一覧図には、子の続柄が実子か養子か明記されている必要があり、故人に養子がいる場合はその戸籍謄本や抄本も必要になります。
    また、遺産分割協議書の場合は相続人全員の印鑑証明書も必要です。なお、基本的に必要書類はコピーでも構いませんが、印鑑証明書は原本を提出する必要があります。

  • ケースにより必要になる書類

    先述の必要書類に加え、以下のケースでは追加の必要書類があります。
    特定居住用宅地等において同居親族が相続する場合
    ・故人の住民票の除票
    ・相続人の住民票
    ※マイナンバー確認書類でも代用可能
    特定居住用宅地等において別居親族が相続する場合
    ・相続開始前3年以内に住んでいた家屋が本人や配偶者が所有していないことを証明する書類(相続家屋の登記事項証明書、住んでいる家屋の賃貸借契約書など)
    ・故人の戸籍の附票
    故人が高齢者施設に入居していた場合
    ・施設入居時の契約書
    ・要介護認定または要支援認定または障害の認定を証明する書類(要介護認定証、要支援認定証、障害福祉サービス受給者証など)
    ・相続開始後に作成された故人の戸籍の附票
    区分所有建物で同居を主張する場合
    ・建物の登記事項証明書
    特定事業用宅地等の場合
    ・相続開始前3年以内の故人の確定申告書
    ・固定資産税評価証明書
    ・事業用資産の明細書(相続開始前3年以内に事業を始めた場合)
    ・総務大臣が交付した証明書(郵便局舎の敷地として使われている宅地等の場合)
    特定同族会社事業用宅地等の場合
    ・法人の定款
    ・法人の相続開始直前の発行済み株式総数または出資総額を証明する書類、および故人やその親族、故人と特別な関係がある者の株式総数を証明する書類(株主名簿、株主リストなど)
    特定貸付事業用宅地等の場合
    ・故人が相続開始日まで3年を超えて特定貸付事業を行っていたことを証明する書類(過去3年以上分の確定申告書、賃貸借契約書など)

特例を利用するうえでの注意点

  • 特例を利用するうえでの注意点
  • ここでは、特例を利用するうえでの注意点を解説します。適用を受けられない恐れやペナルティを受ける恐れがあるため、要件やルールはしっかり確認しましょう。

  • 特例適用後の相続税が0円でも申告する

    特例適用後の相続税が0円でも、申告が必要とされています。申告を行わない場合、特例が適用されない可能性があり、本来の評価額に基づいて相続税が課税される恐れがあります。
    また、延滞税や無申告加算税などのペナルティを課されるかもしれません。そのため、申告手続きは忘れないようにしましょう。
    なお、特例を適用する前の財産額が基礎控除額を超えない場合、そもそも相続税は発生しないため、特例を適用する必要はありません。

  • 遺産分割協議は申告期限までに行う

    特例を適用するためには、申告期限までに遺産分割協議を完了し、誰がどの土地を相続するか決定している必要があります。そのため、遺産分割は早めに済ませましょう。
    遺産分割が間に合わない場合は、申告期限までに申告期限後3年以内の分割見込書を税務署に提出することで、宅地の取得者が決定されるまで期限を延長できます。申告期限から3年以内に分割された場合、更正の請求によって特例の適用が可能です。
    申告期限後3年が経過しても遺産分割が成立しない場合は、遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書を税務署に提出しましょう。税務署長の承認が得られたら、特例適用をさらに延長できる可能性があります。
    しかし、特例を適用しないまま当初申告(1回目の確定申告)を行う場合、一旦本来より多額の相続税を納める必要があります。その後分割されても税金の還付を受けるためには更正の請求が必要なため、当初申告で特例を適用した場合に比べて手間がかかるでしょう。

  • 適用要件や必要書類は入念に確認する

    先述の通り、特例の適用要件や必要書類は複雑です。特に、別居親族の場合は適用要件が多く、実際には対象外だったというケースも少なくありません。
    適用要件や必要書類を誤ると特例を適用できず、本来の評価額に基づいて相続税が課税される恐れがあります。過少申告加算税や延滞税などの追徴課税が課される恐れもあるため、税理士へ相談することも検討されるとよいでしょう。

  • 申告期限前に土地を売却しない

    特例の適用要件には、基本的にその土地の所有が含まれています。そのため、納税資金を確保するために申告期限前に土地を売却すると特例の対象外となってしまうかもしれません。売却によって納税額が増えてしまう事態を避けるためには、計画的な納税資金の準備が重要です。

  • 相続時精算課税制度との併用は不可

    相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子ども・孫への贈与において、累計2,500万円まで贈与税が非課税になる制度です。2024年より、年110万円の基礎控除も新設されました。贈与者が亡くなったら、これまで受けた相続時精算課税制度による贈与財産を亡くなった時点の価額で相続財産に加えて相続税を計算します。
    小規模宅地等の特例は、故人が亡くなった時点で所有していた土地を相続・遺贈で引き継いだ際に適用されるのが特徴です。相続時精算課税制度は生前贈与の一種であり、すでに亡くなった時点で故人の所有物ではないため、特例の要件を満たしません。
    ただし、相続時精算課税制度で建物のみ贈与し、土地は故人が所有したままであった場合、土地に対して小規模宅地等の特例を適用できる可能性があります。

まとめ

  • まとめ
  • 小規模宅地等の特例は一定の要件を満たすことで相続税評価額を減額できる制度で、土地や相続人の種類によって限度面積や軽減度合いが異なります。特例を利用するためには、故人の相続関係を証明する書類と遺言書または遺産分割協議書が必要です。ケースによってさらに追加の必要書類があります。
    また、相続時精算課税制度との併用はできない点や特例適用後の相続税が0円でも申告が必須な点などには注意です。適用要件や必要書類も複雑なため、相続税に精通した税理士に相談することをおすすめします。

FAQ

  • Qアイコン 小規模宅地等の特例とはどのような制度ですか。

    故人が住んでいた自宅や事業で使っていた土地を相続する際、一定の要件を満たすことで相続税評価額を減額できる制度です。相続税は財産の評価額を基に計算されるため、土地の評価額が下がれば相続税額も下がります。借地権や地上権などの土地の権利にも適用が可能です。

  • Qアイコン 減額できる面積と割合はどのくらいですか。

    特定居住用宅地等は330㎡まで80%、特定事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等は400㎡まで80%、貸付事業用宅地等は200㎡まで50%が減額されます。限度面積を超える部分は通常の評価額で計算されます。

  • Qアイコン 特例を適用して相続税が0円になる場合でも申告は必要ですか。

    申告が必要とされています。申告を行わない場合は特例が適用されない可能性があり、本来の評価額に基づいて相続税が課税される恐れがあります。延滞税や無申告加算税などのペナルティを課されるかもしれません。

  • Qアイコン 特例を利用するために必要な書類は何ですか。

    共通して必要になるのは、故人の相続関係を証明する書類(戸籍謄本または法定相続情報一覧図)と、遺言書または遺産分割協議書です。同居親族が相続する場合や別居親族が相続する場合、故人が高齢者施設に入居していた場合など、ケースによって追加の書類が必要になります。

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