アパート経営の回収期間は?パターン別に目安を調査
不動産投資の一つとしてアパート経営を検討されている方のなかには、「投資資金の回収期間をあらかじめ知っておきたい」という方もいるのではないでしょうか。不動産投資は、家賃収入を継続的に得るだけではなく、投資資金以上の金額を回収できることも大切になります。不動産商品は高額のため、投資する前に資金回収のシミュレーションを行いましょう。
この記事では、アパート経営について、投資計画の重要な要素の一つである利回りや投資資金の回収期間の目安、投資計画に必要となる指標とシミュレーション方法などを解説します。
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アパート経営の回収期間を考える前に、まずは「利回り」について知っておきましょう。利回りは、物件を選ぶ際に重要な指標となるものですが、回収期間の計算にも関連しています。
利回りとは、物件の購入価格に対する年間の収益を表した割合です。簡単に言えば、利回りが高い物件は利益率が高く、利回りが低い物件は利益率が低いということになります。
利回りの種類には以下の2種類があり、それぞれ知りたい項目によって、使い分けが必要です。
■表面利回り
購入価格に対する収益率です。物件の購入価格に対して、おおまかな利益率が知りたい場合に使用されます。物件情報に掲載されている利回りは、表面利回りを指していることが一般的です。ただし、この計算方法は、経費を考慮して算出していないため、表面利回りだけで物件の購入を判断しないようにしましょう。
表面利回りの計算方法は、以下のとおりです。
表面利回り(%)=年間の家賃収入÷物件の購入価格×100
■実質利回り
購入価格以外にかかる経費を考慮した収益率です。先ほどご紹介したように、表面利回りは経費を考慮しない分、実質利回りの方がより現実的な数値と言えます。経費には、登記費用や税金、火災保険料、ローンや不動産仲介関連の手数料、修繕費などが含まれます。
実質利回りの計算方法は、以下のとおりです。
実質利回り(%)=(直近1年間の家賃収入-年間諸経費合計)÷(物件の購入価格+物件購入時の諸経費合計)×100
このように、検討中の物件のおおまかな収益率を知りたい場合は「表面利回り」、回収期間のシミュレーションのため、具体的な収益率を知りたい場合は「実質利回り」で見るのがおすすめです。
なお、利回りが低い物件は、その分収入が低くなり、回収期間も長くなるという仕組みです。一方で、利回りが高いと、収入が多くなるため、回収期間は短くなる傾向にあります。
その理由を、具体的な数値を用いて見ていきましょう。ここでは分かりやすくするために、表面利回りを使ってご説明します。
1,000万円の物件A、Bをそれぞれ購入したと仮定して計算します。Aの物件の表面利回りは15%、Bの物件の表面利回りは25%です。この場合、以下のような計算ができます。
Aの回収期間
1年あたりの回収金額:1,000万円×15%=150万円
回収期間:1,000万円÷150万円=6.66年…=約7年
Bの回収期間
1年あたりの回収金額:1,000万円×25%=250万円
回収期間:1,000万円÷250万円=4年
このように、利回りが高い物件の方が、回収期間は上記例の場合だと短く済みます。-
利回りについてご紹介したところで、アパート経営の回収期間について見ていきましょう。
一般的に、不動産投資における資金回収期間は5~10年と言われているようです。
回収期間を短くするためには、「家賃を高く設定する」「自己資金を減らして諸経費の削減を行う」などが有効ですが、これらの方法は、入居者が集まりにくくかえって空室リスクを高めてしまうかもしれません。しかし、回収期間の設定を長くしすぎてしまうと、建物の老朽化などにより修繕が発生し、資金を回収する前に大きな出費が出る恐れもあります。
また、一口に不動産投資と言っても、「マンションかアパートか」「一棟か区分か」「新築か中古か」など、条件もさまざまです。これらの条件によっても、投資計画は変わってくるため注意しましょう。
ここでは、新築アパートと中古アパートに着目し、利回りの目安から回収期間を推測していきましょう。新築アパート経営の回収期間は?
新築アパートは、「入居希望者が多く空室リスクが低いこと」「修繕費がほとんどかからないこと」などが特徴として挙げられます。また、入居者の入れ替わりでも大幅なリフォームが必要ない場合が多く、余計なコストがかかりません。
ただし、購入価格は中古アパートに比べて高い傾向にあります。一方で、周囲の物件との競合も考慮し、家賃を高く設定することは難しいため、利回りは低くなりやすく、必然的に回収期間は長くなる傾向にあります。中古アパート経営の回収期間は?
中古アパートの場合、購入価格が一般的には安いことが特徴です。また、過去の動向を管理会社や不動産会社のデータを通して知ることができるため、空室率を想定しやすいことも利点として挙げられます。立地条件が良く、空室リスクも心配ない場合は、利回りが高くなりやすく回収期間も短く済むでしょう。
一方で、築年数が古かったり、設備や外観が老朽化したまま放置していると、立地条件が良くても空室リスクが高くなりやすくなります。この場合、購入価格が安くても回収期間が長くなる場合があるため、注意が必要です。-
ここまで、利回りと回収期間の関係についてご紹介してきました。アパート経営で失敗しないためには、回収期間の指標も知っておきましょう。ここでは、「CCR」「PB」「ROI・ROE」という三つの指標について、ご紹介します。
CCR(Cash on Cash Return)
不動産投資では、収益率が重要なポイントのです。収益率が高くなることで、さまざまなリスクに対応でき、高い売却金も期待できるでしょう。
CCRは「自己資金収益率(配当率)」とも呼ばれ、物件を購入した際の自己資金に対して、年間でどの程度の収益(リターン)があるかを知ることができます。
計算方法は、以下のとおりです。
■ CCR(%)=年間収益額÷自己資金投資額×100
では、200万円の自己資金を投資して、年間で60万円の収益を得た場合のCCRを計算してみましょう。
■ (年間収益額)60万円÷(自己資金)200万円×100=30(%)
したがって、自己資金は年に30%回収できることが分かりました。また、回収期間を計算すると、
■ (自己資金)200万円÷(回収額)60万円=3.33年
となり、4年未満で全額回収できることが分かります。
このように、CCRは、自己資金の全額回収に何年かかるのかがわかります。CCRの数値が高くなるほど回収期間は短く、回収効率が良いということです。
ただし、投資初期のCCRの指標を継続的に使用していると、経営判断を間違うこともあります。物件は、月日が経つにつれ、老朽化や家賃の下落、大規模修繕の発生などにより収益が変化します。より正確な回収期間を知るためには、年ごとのCCRを算出しましょう。PB(Pay Back Period)
PBは「資金回収期間」とも呼ばれ、自己資金を何年で回収できるかを、より具体的に知るための指標です。PBの場合、年間収益額から諸経費を引いて計算します。
■ PB(年)=自己資金投資額÷(年間収益額₋諸経費)
では、以下のような条件を例に挙げて見ていきましょう。
・自己資金:200万円
・年間収益額:60万円
・諸経費:20万円
これを計算式に当てはめると、
■ 200万円÷(60万円₋20万円)=5年
となり、自己資金200万円を回収するには、諸経費を考慮して、約5年かかることが分かりました。
PBは、数値が低くなるほど回収期間が短くなり、回収効率を判断する材料にもなります。ただし、税金や手数料などの諸経費を含めて計算するため、諸経費を低く見積もったシミュレーションを行うと、実際の回収期間との乖離が起こる可能性もあり、注意が必要です。
なお、PBの数値を低くするには、自己資金の投資額を減らしたり、収益アップと諸経費の軽減を行ったりすると良いでしょう。ROI(Return On Investment)・ROE(Return On Equity)
ROI・ROEは「投資収益率(回収率)」とも呼ばれ、自己投資額と借入金を含めた総投資額に対して、年間にどの程度の収益があるかを知るための指標です。計算方法は、以下のとおりです。
■ ROI・ROE(%)=年間収益額÷総投資額(自己資金+借入金)×100
では、以下の条件の場合で計算してみましょう。
・物件購入額:2,000万円(自己資金200万円+借入金1,800万円)
・年間収益額: 60万円
これを計算式に当てはめると、
■ 60万円÷(200万円+1,800万円)×100=3%
となり、投資額全体に対する年間の回収率は3%だと分かります。ROI・ROEの数値が高ければ高いほど、回収期間は短くなり、効率が良いという目安のひとつになるでしょう。-
これまでも何度か触れたように、利回りや当面の家賃収入だけを考えて不動産投資の判断をするのはリスクがあります。アパート経営などの不動産投資で成功するためには、自己資金の回収期間やローンの期間などを考慮して、最終的にどのぐらいの利益が出るのか、出口戦略までを考えることが大切です。
では、実際にシミュレーションを行ってみましょう。以下では、新築アパートと中古アパートにそれぞれいくつかの条件を設定して算出します。新築アパートの回収期間をシミュレーション
・アパート購入価格:6,000万
・頭金:0円
・家賃:1室10万円/月×10部屋
・ローン:30年
・固定金利:2%
・諸経費:15%
上記の条件の場合、家賃収入は10万円×10部屋×12ヶ月として、年間1,200万円となります。ここに、20%の空室リスクを考慮すると、1200万円×0.8で960万円の家賃収入が考えられるでしょう。
また、諸経費を家賃収入の15%と仮定すると、1,200万円×0.15で180万円ということがわかります。
これらの条件から考えられる利回りは、以下のようになります。
表面利回り
(1,200万円-180万円)÷6,000万円×100=約17%
実質利回り
(960万円-180万円)÷6,000万円×100=約13%
さらに、表面利回りで回収期間を考えると
回収期間(表面利回り)
6,000万円×0.17=1,020万円
6,000万円÷1020万円=5.8年
となり、約6年かかることが予想されます。
一方、実室利回りでは
回収期間(実質利回り)
6,000万円×0.13=780万円
6,000万円÷780万円=7.69年
となり、約8年かかることがわかるでしょう。中古アパートの回収期間をシミュレーション
次に、中古アパートの回収期間を計算してみましょう。中古アパートの購入価格はかなり下がる傾向にあることから、ここでは、新築アパートの75%の金額と仮定します。
・アパート購入価格:4,200万
・頭金:0円
・家賃収入:1室7万5,000円/月×10部屋
・ローン:30年
・固定金利:2%
上記の条件の場合、家賃収入は7万5,000円×10部屋×12ヶ月として、年間900万円です。ここに、20%の空室リスクを考慮すると、900万円×0.8となり、720万円の家賃収入が考えられます。
また、諸経費は家賃収入の15%と仮定すると、900万円×0.15となり、135万円ということがわかります。
これらの条件から考えられる利回りは、以下のようになります。
表面利回り
(900万円-135万円)÷4,200万円×100=約18.2%
実質利回り
(720万円-135万円)÷4,200万円×100=約13.9%
さらに、表面利回りで回収期間を考えると
回収期間(表面利回り)
4,200万円×0.182=約764万円
4,200万円÷764万円=5.5年
となり、約6年かかることが予想されます。
一方、実室利回りでは
回収期間(実質利回り)
4,200万円×0.139=583.8万円
4,200万円÷683.8万円=7.2年
となり、約7年かかることがわかるでしょう。-
さて、ここまで、利回りから回収期間についてご説明してきました。では、これらを用いて回収期間を知り、より短い期間で回収できるように計画するにはどうしたら良いのでしょうか。
自己資本を減らす
銀行などからの借入れを利用して、自己投資額を減らす方法があります。一見、借入金が増えることで損をするような気がしますが、不動産投資特有の「レバレッジ効果」を利用すると回収期間の短縮が期待できるでしょう。レバレッジ効果とは、「てこの原理」に例えられる「少ない資金で大きな利益を生み出す」効果のことです。
では、CCRとROI・ROEに注目して考えてみましょう。
例えば、3,000万円の物件を購入し、アパート経営を行うと仮定します。物件の表面利回りは5%、諸経費は20万円とします。表面利回りは5%ですので、年間の収入は150万円です。
まず、3,000万円全額を自己投資で賄う場合、以下のようになります。
・CCR:(150万円₋20万円)÷3,000万円×100=4.33%
・ROI・ROE:(150万円₋20万円)÷3,000万円×100=4.33%
総投資額=自己投資額ですから、収益率(回収率)は同じです。
では、3,000万円のうち、自己投資額は600万円、残りの2,400万円は借入金(毎月の返済額は80万円)とした場合はどうでしょうか。
・CCR:(150万円₋20万円₋80万円)÷600万円×100=8.33%
・ROI・ROE:(150万円₋20万円₋80万円)÷3,000万円=1.67%
融資を受けたことによりROI・ROEは1.67%に下がりましたが、CCRは4.33%から8.33%に上がっています。このように、あえて投資資金の一部を借り入れることにより、自己投資額を小さくし、レバレッジ効果を利用して回収期間を短くすることが可能になります。耐用年数の長い物件を選択する
耐用年数の長い物件は、融資期間に有利になりやすいという特徴があります。税法上の耐用年数は以下のとおりです。
・木造:22年
・軽量鉄骨:27年
・重量鉄骨:34年
・鉄筋コンクリート:47年
融資の期間は、耐用年数より短くなりますが、万が一返済不能になったとしても物件を売却して残積に充てられます。残存期間の長い建物を購入し、金融機関の融資を長期間にわたって受けることができれば、キャッシュフローを多く残すことが可能です。
したがって、耐用年数の長い物件を購入すれば、手元に残る資金が増加し、回収期間の短縮も期待できるでしょう。新たな収入源を増やす
そのほか、家賃収入以外の収益を増やし、CCRの数値を上げる方法があります。例えば、以下のようなものがあります。
・駐車場の設置
・看板の設置(広告収入)
もちろん、経費を抑えることでも収入を増やせます。家賃を高くすることも収入増加を期待できる方法の一つですが、慎重に行わなければ空室リスクの原因となるため注意しましょう。-
投資には少なからずリスクが伴いますが、不動産投資も例外ではありません。ここでは、回収期間を検討する際の注意点をご紹介します。
リスクを考慮する
不動産投資は株やFXなど、ほかの投資よりも先を見通しやすいと言われていることから、投資計画を行う際には、さまざまなリスクを考えて回収期間を設定することが大切です。例えば、以下のようなリスクが考えられます。
■金利が上昇する
不動産ローンの金利を「変動金利」に設定して借り入れると、金利が上昇した場合に、毎月の返済額が増えてしまう恐れがあります。変動金利の利率は、「短期プライムレート」をもとに設定されています。短期プライムレートとは、優良企業向けに物件を貸し出す際に、短期で貸付する場合の最優遇金利のことです。この金利に、金融機関の利益とコストを含めたものを基準に利率が決定されています。
なお、プライムレートを基準にした変動金利は、半年に一度見直しが行われます。プライムレートが急激に上がった場合も、返済額は半年で、最大1.25倍までしか上げられません。しかし、上限があるとはいえ返済額が増えることは変わらないため、余裕を持って返済できるように計画を立てましょう。
■空室が多く発生する
アパート経営のリスクのなかでも、特にキャッシュフローに与える影響が大きいのが空室リスクではないでしょうか。空室が発生すると、収入の低下につながります。経営中、ずっと満室であれば良いですが、多くの物件なかなか理想通りにはいきません。
空室率を調べるには、購入予定のアパートと、条件が似ているアパートの空き状況をチェックすることがおすすめです。賃貸情報サイトで公開されている情報のチェックや、仲介している不動産業者に確認してみるのも良いでしょう。
また、空室リスクを防ぐためには、入居者選びを慎重に行ったり、余裕資金を保持したりすることも大切です。比較的空室が埋まりやすい立地であれば、通常家賃の2ヶ月程度の余裕資金を、それ以外の地域ならば4ヶ月程度は用意しておくことをおすすめします。
■家賃が下落する
物件の周辺に競合の賃貸物件ができたり、建物が老朽化したりすると、従来の家賃では入居者が集まらない可能性もあり、家賃を下げて対応する必要があります。建物の老朽化は避けることができないため、物件購入時にあらかじめ家賃の下落を計算にいれておきましょう。
なお、家賃相場は下落するだけでなく、賃貸住宅の需要が高まったり物価が上昇したりするなどの理由で上昇する場合もあります。
■災害が起こる
災害はいつ起こるかわかりません。火災保険や地震保険、そのほかの保険に加入するなど、十分に対策を講じておかないと、修繕や補修に手が回らなくなってしまうかもしれません。
■資産が下落する
毎月安定した家賃収入があっても、物件の売却時に資産価値が下落していると、損失が出てしまいます。先ほどご説明したように、建物の老朽化は避けては通れないため、購入時と同じ価格で売却することは難しいでしょう。しかし、損失を最低限に抑えるためにも、「いつ」「いくらで」売却するのかという出口戦略を立てておくことも重要です。表面利回りが高い物件は理由を確認する
売られている物件のなかには、利回りが高いことを特徴として挙げているものもあるでしょう。利回りの高い物件は魅力的ですが、これまでご説明したように、必ずしも高い収益が見込めるとは限らないので注意しましょう。
広告などに掲載されている「利回り」は表面利回りを指すことが多いということは、冒頭でご紹介しました。表面利回りは、諸経費などが含まれていないため、購入価格が低いという理由で利回りが高くなっていることもあります。なかには、「立地条件が悪い」「入居者トラブルになりやすい」など、注意すべき物件もあるため、購入前に不審な点がないか調査することが大切です。
高利回りの物件は、一見優良物件に見えても、弱点・リスクが潜んでいることがあります。不動産取引時において、売主には必ず心理的瑕疵を告知する義務があるため、買主が説明を受ける際は念頭に置いておきましょう。そのほか、修繕履歴の閲覧や専門家への依頼も可能のため、不審な点がないか調べてみましょう。
何から調べたらいいかわからない方は弊社でも相談を受けておりますので、お気軽にご連絡ください。初期費用の回収を急がない
「投資した費用をできるだけ早く回収したい」と思う方も多いでしょう。しかし、賃貸経営にはさまざまなリスクがあるとご紹介したとおり、自己資金や諸経費を抑えようとすると後に困ってしまうかもしれません。初期投資を抑えるために、設備を古いままにしていたり、収入増加のために家賃を上げようとしたり、保険を止めようとしたりするのは、かえって大きな損になることもあります。そのため、無理に回収せず、適切な回収期間を考えましょう。
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