不動産の利回りとは?20パーセントを超える物件は多いのか

不動産投資といった資産運用には、毎年の収支を予測するのに有効な指標である利回りが存在します。不動産投資用の物件を長期経営するには、利回りは重要な数値です。

投資を実施する際は投資用物件の利回りを確認し、高利回りの物件を探しますが、利回りの相場はどのくらいなのでしょうか。
この記事では一つの基準として、利回りが20パーセント以上ある物件の特徴や種類、基本的な利回りの相場、利回り改善の方法などを解説します。

不動産投資の利回りとは

  • 不動産投資の利回りとは
  • 不動産投資における利回りとは、投資金額に対して利息込みで得られる年間収益の割合を指し、パーセントで表します。不動産物件の購入価格に対する、年間の家賃収入の割合と見ても良いでしょう。

    不動産投資の利回りは、大きく分けて「表面利回り」「実質利回り」「想定利回り」の3つがあります。利回りを正確に理解するためにも、それぞれの特徴を押さえておきましょう。

  • 表面利回り

    表面利回りは「グロス利回り」とも呼ばれており、不動産物件の投資金額に対する年間の収入を算出する数値を指します。
    表面利回りの計算式は以下の通りです。

    表面利回り = 年間の家賃収入 ÷ 物件の購入価格 × 100

    上記計算式にある年間の家賃収入は、満室を想定したものとして計算します。
    投資用物件を販売するサイトや広告では、基本的に表面利回りを掲載しているため、投資に問題がないか最初に確認するのは表面利回りとなります。ただし、表面利回りには不動産の維持費などは含まれていないため、実際の収益を示す数値ではないことに注意が必要です。

  • 実質利回り

    実質利回りは、年間で得られる家賃収入から必要な諸経費を差し引いて算出する数値で、「ネット利回り」と呼ばれることもあります。
    実質利回りの計算式は以下の通りです。

    実質利回り=(年間の家賃収入- 物件維持にかかる年間の諸経費)÷(物件の購入価格 + 購入時の諸経費)× 100

    計算式の諸経費には、固定資産税や管理委託費、修繕積立金などが含まれます。
    実質利回りは、物件購入にかかった費用と維持に必要な諸経費を反映させているため、実際に得られる収益の指標を確認できるのがメリットです。

  • 想定利回り

    表面利回りと実質利回りの他に、不動産に想定利回りが提示されているケースがあります。想定利回りとは、満室状態で予想できる家賃収入から利益を算出する数値です。家賃の想定は、周辺相場を考慮して計算します。
    想定利回りの計算式は以下の通りです。

    想定利回り = 年間で想定できる家賃収入 ÷ 物件の購入価格 × 100

    年間の想定家賃収入から利益率を計算するのが特徴の想定利回りですが、表面利回りと同様に空室・経費のどちらも考慮されません。

不動産投資で利回りが20パーセントある物件は多い?

  • 不動産投資で利回りが20パーセントある物件は多い?
  • 投資用物件の中には、利回りが20パーセントあるいは20パーセント以上の物件が見つかる場合があります。
    実際に、20パーセントを超える利回りの物件はどのくらい存在すると考えられるのか、利回りが高い物件の特徴や種類を解説します。

  • 利回りが20パーセントを超える物件は一定数ある

    不動産投資用の物件が購入できるサイトなどを見ると、利回りが20パーセントを超えている条件の物件も一定数は存在します。しかし、物件が20パーセントを超える高利回りになるのは理由があるため、購入を即決するのは良くありません。

    利回りが20パーセントを超える不動産の多くは、地方にある中古の築古物件です。建物の価値が下がっている築古物件は、立地や環境が良くても低価格で販売されるケースがあるため、高利回りになる傾向があります。
    また、築古物件は空室や大規模修繕といったリスクの対策を行わなければ、高利回りであっても経営に行き詰まる可能性があるため注意が必要です。

  • 利回りが高い物件の特徴・種類

    高利回りになりやすい物件の条件には、築年数やエリアの他に建物の構造が関係します。

    築年数
    先にも述べたように、築古物件は利回りが高くなりやすい傾向にあります。具体的には、築20年前後の物件が高利回りに該当しやすい条件です。
    注意点として、築年数が経過した物件は大規模修繕のリスクが高く、高額の費用がかかってしまう可能性もあるため、建物や設備の定期的なメンテナンスが必須といえます。

    エリア
    築年数と合わせて、物件が建つエリアも利回りに影響します。都心よりも地方にある物件の方が、価格が下がり取得コストを抑えられるため、利回りが上がりやすくなります。
    ただし、高利回りでもエリア面では、都心部への人口集中や少子高齢化を考慮して物件を選ばなくてはなりません。人口減少が著しいエリアでは、不動産投資の失敗のリスクが高まるでしょう。

    建物の構造
    建物で強度が特に高い構造は、鉄筋鉄骨コンクリート造や鉄筋コンクリート造です。反対に木造の建物は強度が低く、価格が安くなります。
    つまり、木造物件であれば利回りも高くなりやすいといえますが、木造には断熱性能の低さや音漏れなどの問題があるため、入居先としてのニーズはそこまで高くありません。

  • 20パーセントを超える利回りの不動産を探すには

    不動産投資を始める際、物件を購入するのに不動産投資サイトや投資用物件のサイトを閲覧するケースが多いでしょう。実際に、これらのサイトはさまざまな会社が運営していますが、ほとんどのサイトで希望条件を設定して検索できるようになっています。

    検索の希望条件では、利回りの設定も可能です。利回りが20パーセント以上の物件を検索することで、希望する条件に合う不動産を探せるでしょう。

不動産投資における利回りの最低ライン

  • 不動産投資における利回りの最低ライン
  • 不動産投資では利回りの把握が重要です。利回りは、物件の状態やエリアなどが影響して決まります。
    しかし、不動産投資における利回りには平均的な目安が存在するため、投資を進める上での参考として確認しておきましょう。

  • 不動産投資での利回りの相場

    不動産投資における現実的な利回りの相場は、経営する物件のタイプや地域で違いがあります。以下では、利回りの相場を物件のタイプ別にまとめました。

    ・一棟マンション
    新築 約6%
    中古 7~8%

    ・一棟アパート
    新築 約8%
    中古 9~10%

    ・区分マンション
    新築 3~4%
    中古 5~8%

    中古の区分マンションの場合、築20年程度で約5~6%、築20年を超える物件で約7~8%と見て良いでしょう。

  • 基本は5~6%程度が目安

    不動産投資における利回りの最低ラインは、物件の築年数やエリア、投資の種類によって変わってくるため、確実に正解だといえる数値はありません。しかし、一定の目安になる基準はあります。
    不動産投資の基本的なラインは、表面利回りが5〜6%、実質利回りが3%程度と見るのが良いでしょう。この目安を下回ると、投資の失敗リスクも高まりやすくなります。

    築古の利回りが高い物件でも、長期経営をする上では空室や修繕リスクも考慮しなければなりません。将来的な利回りを考えながらも、投資計画を進める必要があります。

  • 不動産投資では実質利回りが重要になる

    不動産投資を安定して長期経営するには、利回りの確認が大切です。利回りには、表面利回りや実質利回りなどがありますが、不動産投資では必要な諸経費を反映させている実質利回りが重要になります。

    不動産投資の広告や投資用物件が購入できるサイトでは、物件の利回りとして基本的に表面利回りが記載されています。表面利回りには不動産の維持費といった諸経費が含まれていないため、収益の割合が予想できる実質利回りを確認せずに、表面利回りのみを把握するのは避けるべきです。

  • 表面利回りは参考までに留めておくと良い

    前述の通り、不動産投資では、収益を把握できる実質利回りを重要視します。そのため、情報として掲載されている表面利回りは、あくまでも参考程度に留めておいた方が良いでしょう。

    不動産投資の参考として表面利回りを目安にする場合は、周辺にある競合物件の利回りや、利回り以外の不動産に関する情報を収集して判断すると、経営予測をしやすくなります。

不動産投資で利回りを改善するには

  • 不動産投資で利回りを改善するには
  • 初めに投資用物件を選ぶ際や購入後の維持・管理によって、不動産投資の利回りを高めることが可能です。前述した利回りが高い傾向にある物件を含め、利回りの改善方法を把握しておくことで、安定した不動産投資につながるでしょう。

    ここでは、不動産投資における利回りの改善方法を6つ解説します。

  • 家賃収入を増やす

    不動産の利回りを改善させる方法として、真っ先に挙げられるものは家賃収入を増やすことです。家賃収入を増やすには満室状態を維持し、退去者が出ても物件の空室期間をできるだけ短くする工夫が求められます。

    空室対策には、物件の賃貸としてのニーズを高めなければなりません。具体的には、水回りなどの設備をグレードの高いものに交換したり、無料のインターネット設備を付けたりといった対応です。物件の管理規約に問題なければ、ペット可の物件に切り替えるのも、一部の入居者層に需要があります。
    これらの他にもさまざまな空室対策が考えられますが、中にはコストがかかるものもあるため、不動産の状態や経営状況に合わせて対応しましょう。

  • 物件の設備・点検を定期的に実施する

    物件の外観や室内を良い状態に保つことで、入居者が住みやすい環境を作れます。住みやすい物件であれば長く入居する方も増え、空室リスクを抑えられるでしょう。

    良好な環境の物件にするには、建物の定期的な設備・点検が大切です。メンテナンスや修繕にはコストがかかりますが、長期の不動産経営を考えると、将来的に空室リスクや入居者からのクレームといったトラブルの発生も予想できます。利回り改善のためにも、建物の設備・点検は、多少のコストがかかっても定期的に実施すべきでしょう。

  • ローンの繰り上げ返済を行う

    ローンの繰り上げ返済とは、まとまった金額を毎月の返済額とは別にして返済する方法です。元本のみの返済に充てられることで支払い利息がなくなり、総支払額を減らせます。

    不動産経営の状態に問題がなく、手元の資金に余裕がある場合は、ローンの繰り上げ返済も検討してみると良いでしょう。なお、繰り上げ返済には残りの返済期間を短くする「期間短縮型」と、毎月の返済額を少なくする「返済額軽減型」の2種類があります。繰り上げ返済を検討する場合は、両者を比較し状況に最適な方を選びましょう。

  • ローンの借り換えを検討する

    不動産投資で利用できるローンは、今まで融資を受けていたローンを解約し、新しく別の金融機関でローンの借り換えが可能です。借り換えにより、さらに金利の低い金融機関でローンを組み替えることで、不動産投資のキャッシュフローの改善を狙えます。

    不動産投資に慣れているオーナー様の中には、ローンの借り換えを実施する方も珍しくありません。ただし、借り換えた後のキャッシュフローだけでなく、借り換えで必要な手数料も考慮しなくてはなりません。借り換えの支出と、改善が期待できるキャッシュフローとのバランスを判断して、実施するかを検討します。

  • 管理会社や保険会社との契約を見直す

    物件に関わる管理費や保険料は見直すことで支出を減らし、利回りの改善にもつながります。火災保険などの保険の範囲が適切かどうかを把握したり、他の保険会社と内容を比較したりすることにより、保険料を見直せるでしょう。

    物件の管理を不動産管理会社に任せているケースでは、委託している管理の内容を再度チェックしてみると、かかっている管理費用が適切かどうかを改めて確認できます。

  • リフォームやリノベーションを考える

    利回りの改善には、リフォームやリノベーションも有効です。リフォームは古くなった箇所を修繕して新しくする工事、リノベーションはライフスタイルに合わせた住居に改修する工事を指します。

    リフォームやリノベーションで、間取りを変えたり新しい設備を導入したりできれば、賃貸としての需要が高まります。需要が高まれば、利回りも改善できるでしょう。また、必要に応じたリフォームやリノベーションの実施により、家賃設定の見直しが可能です。古い状態の物件よりも、家賃を高めに設定し直すことができます。
    リフォームやリノベーションには多額の費用が必要なことから、コストがかかりすぎると利回りの低下を招く可能性があるため、費用対効果を十分に検討しなければなりません。

利回りを確認する際の注意点

  • 利回りを確認する際の注意点
  • 不動産投資における利回りは、安定した収益を得るために重要な数値です。不動産投資で利回りを確認する際は、以下の4つの注意点を意識すると良いでしょう。

  • 利回りの高さだけを見て判断しないようにする

    利回りも大切ですが、不動産投資では築年数やエリア、周辺環境を見て物件を選びましょう。利回りが高い物件は、築年数や建物の設備などが理由で利回りが上がっているケースがあるためです。

    利回りがそれほど高くない不動産でも、建物の資産価値が下がりにくい物件であれば、家賃も大きく下落するケースは少ないでしょう。利回りが高い物件を選ぶよりも、長期的な経営でのメリットが大きくなる場合もあります。

  • 実質利回りを確認して検討する

    高利回りに見える不動産でも、物件情報の多くは表面利回りが記載されているため、そのまま鵜呑みにせず実質利回りの方も必ず確認するようにしましょう。

    実質利回りの確認を自力で行うのが難しい場合には、実質利回りのシミュレーション作成を不動産会社に依頼するのも方法の一つです。しかし、物件購入時にかかる諸経費や、建物の維持・管理に必要な費用を正確に伝える必要があります。

  • 高利回りの物件は必ず条件を確認する

    20パーセントを超える高利回りの物件も、条件によっては存在します。しかし、極端に高い利回りで掲載されている物件の場合は、投資する側にとって不利な条件が設けられているケースがあるため、必ず確認しましょう。
    具体的には「住人同士のトラブルが多い」「建物にある設備の状態が良好ではない」「適切なメンテナンス・修繕が行われていない」といった状況です。また、単純に物件が賃貸としての需要が低いのも利回りに影響します。

    不動産投資の利回りについては、掲載されている情報だけを信用するのではなく、実際に現地まで出向いて建物や周辺環境を確認することも大切です。

  • 家賃下落の可能性も考える

    物件購入時からの家賃収入は、変わらず一定のまま続くわけではありません。賃貸物件の家賃は、建物の経年により徐々に下がっていく傾向にあります。

    家賃を下げれば利回りも低下します。そのため、この先家賃が下落した場合に、どの程度の利回りが得られるのか予測しておくことが重要です。将来的な家賃の下落率を予測するには、築年数が10年ほど経過した建物で、購入したい建物と間取りやエリアが同じ物件の家賃を確認すると良いでしょう。

不動産投資で利回り以外の重要なポイント

  • 不動産投資で利回り以外の重要なポイント
  • 不動産投資では、利回り以外にも考えなければならないポイントがあります。物件の入居率や投資における資金計画、出口戦略の確認も行いましょう。

  • 入居率

    利回り以外に、物件の入居率の高さも確認しましょう。入居率とは、マンションやアパートといった賃貸物件で、入居状態にある部屋の割合のことです。入居率が高ければ、賃貸需要が高い物件と判断できます。

    入居率は、ある時点での入居率を指す「時点入居率」、年間の稼働日数における入居日数の割合を示す「稼働入居率」、物件の総空室損料の割合である「賃料入居率」の3種類があります。

  • 資金計画

    不動産投資では物件購入費用以外にも、さまざまな諸費用が発生します。そのため、いくら自己資金を用意するのか、どの程度の借入れを行うのか事前に資金計画を立てておかなくてはなりません。

    自己資金が少ない場合は、借入れも多くなり返済の負担も大きくなります。資金計画を立てる時は、自己資金と借入のバランスを考慮しましょう。

  • 出口戦略

    投資した資金をできるだけ減らさずに撤退するか、出口戦略を考えることも重要です。基本の出口戦略としては、投資用物件の売却が挙げられます。

    他の出口戦略としては、築古物件であれば建て替えも方法の一つです。また、建物を解体して更地にした後に売却するケースもあります。更地を有料駐車場やトランクルームなどに活用する方法も出口戦略として挙げられます。

まとめ

  • まとめ
  • 不動産投資で安定した収益を確保するには、利回りを考慮した賃貸経営を行わなければなりません。投資用物件の中には、20パーセントを超える高利回りの不動産も一定数ありますが、その多くは地方エリアの築古物件です。

    不動産投資では、実質利回りを重視しましょう。実質利回りの基本的な相場は、3%程度といわれています。利回りが低いと投資の失敗リスクも高まりますが、高すぎる利回りの物件にも不利な条件が付けられているケースもあるため注意が必要です。

FAQ

  • Qアイコン 不動産投資の利回りについて教えてください。

    不動産投資における利回りとは、投資金額に対して利息込みで得られる年間収益の割合を指し、パーセントで表します。不動産物件の購入価格に対する、年間の家賃収入の割合と見ても良いでしょう。
    不動産投資の利回りは、大きく分けて「表面利回り」「実質利回り」「想定利回り」の3つがあります。
    詳細はこちらを参考にしてください。

  • Qアイコン 不動産投資で利回りを改善するにはどうすればいいですか。

    不動産投資における利回りの改善方法を6つ解説しています。
    詳細はこちらを参考にしてください。

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