アパート経営をサラリーマンがやると節税になる?徹底解説
アパート経営をサラリーマンがやると節税になる?徹底解説
「節税効果があるから」と、不動産経営を検討されている方もいるのではないでしょうか。不動産経営は、「不動産投資」と言われる資産運用の一つです。
そもそも投資は、投資信託や株式、FXなど様々な種類があります。このような種類の投資は、リターンが大きいものの、リスクも負いやすいという特徴があります。一方、不動産投資は、ローリスク・ローリターンであると言われています。
リスクが無いわけではありませんが、その他の投資方法よりも比較的低いリスクで行えるのです。
その理由は、「資産」となる土地や建物にあります。土地や建物などの不動産は、価値がなくなる可能性が極めて低いため、安定した収入を得られます。それゆえ不動産投資は、堅実な資産運用と言われています。
不動産投資のなかでも、マンションやアパートといった賃貸物件は、収益が高くなりやすく、人気のある方法です。この記事では、アパート経営にフォーカスし、経営のなかで節税する方法などをご紹介します。
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節税には、「実際に税を減らす節税」と、支払う税金を先延ばしにする「課税を繰り延べる節税」の2種類があります。今回は、アパート経営によってできる、「実際に税を減らす節税」について、税金の種類や節税の方法まで、詳しく紹介していきます。
購入したものを経費計上で節税!
アパート経営では、得られた利益すべてに税金がかかるわけではなく、必要経費を差し引いた額を純利益として算出し、それが課税対象となります。
経費には様々な種類が存在しますが、個人が行うアパート経営での経費には、計上する上で下記のような条件が存在します。
・アパート経営に関わる支出か
・支出金額が妥当と判断できる範囲か
・領収書やレシートなどの記録が保管されているか
この条件に従い、それぞれの支出が必要経費として認められるか判断されます。アパートを経営すれば、出費がすべて経費になるわけではありません。
では、経費として計上できるもの、できないものを見ていきましょう。
■ 経費計上できるもの
経費計上できるものとして、以下のようなものが挙げられます。なかには、使途目的によっては経費として認められないものもあるため、よく確認しておきましょう。
・借入金利子
物件購入時に借り入れたローンの「利息部分」です。アパート経営をはじめる際は、自己資金だけでは賄えないことがほとんどです。そのため、多くの場合、ローンを組んでアパートを経営します。ローンを組んだ場合、元本と利息を返済していきますが、利息部分は経費として計上することが認められています。ただし、計上できるのは建物が建てられたあとに支払った利息のみです。
・租税公課
アパート経営にまつわる各種税金のことです。固定資産税や都市計画税、不動産所得税や印紙税などが含まれます。
・管理費や管理委託費
アパート管理に必要な費用や、管理会社に依頼する際の費用などです。例えば、エレベーターや共用部分にかかる費用、清掃に関する費用などが挙げられます。
・損害保険料
火災保険や地震保険、施設賠償保険などの保険料のことです。1年ごとに保険をかけている場合は全額を経費として計上できますが、何年にもわたって保険をかけている場合は、1年あたりの保険料を算出して計上します。
・修繕費(積立金)
アパートのために修繕した費用のことです。ただし、修繕費には経費に計上されないものもあるため注意しましょう。 経費に計上されない修繕費は、「基本的支出」にあたる費用です。設備の仕様期間を延長したり、物件の価値を高めたりする場合に発生する支出は計上できません。
・通信費
不動産会社などのやり取りで発生した電話代や郵送代などのことです。また、インターネット上の通信費も計上できます。ただし、プライベート用とアパート経営用で通信費を分けて管理しておかないと、税務署は経費として認めてくれないケースがあるので注意しましょう。
・減価償却費
建物を減価償却するまで引くことのできる経費です。経費として計上できるもののなかで、多くの割合を占める費用と言えます。こちらは、後ほど詳しくご紹介します。
■ 経費計上できないもの
・借入金元本
物件購入時に借り入れたローンの「元本部分」は、経費に計上できません。経費として計上できるのは、あくまでも利息部分のみのため注意しましょう。
・不動産経営に関係のない税金
所得税や法人税といった不動産経営に関係のない税金は、経費として計上できません。
・修繕が行われていない場合の修繕積立金
アパートは、10年~20年に一度、大規模な修繕を行うことがあります。修繕のために積み立てておくための積立金は、支払いのタイミングによっては経費で計上できない場合があります。修繕が行われていない状態での積立金は、基本的に経費として計上できません。計上できるのは、実際に修繕を行うタイミングのため注意しましょう。
・不動産経営に関係のない費用
不動産経営に関係ないプライベートで使用した費用は、経費として計上できません。そのため、アパート経営に利用した費用などは、プライベートと分けて管理しておくようにしましょう。減価償却!損益通算で所得税を節税!
建物や設備など、長期間管理する固定資産は、費用を一度にまとめて経費計上することはできません。そのため、1年ごとに分けて費用を計上し、これを、「減価償却」と呼びます。
不動産をはじめとする建物は、年数が経つごとに劣化し、価値が下がります。下がった価値を減価償却費として計上するのです。
賃貸経営では、一般的に建物と付帯設備を計上します。アパートを建築した場合、耐用年数に従って建築費を1年ごとに計上していきます。
また、減価償却は、「時間とともに価値が減る資産」に対してのみ使用される考え方です。そのため、物件購入金額のうち、土地の取得にかかった金額は減価償却されません。
減価償却には、「定額法」と「定率法」の2つの方法がありますが、建物については「定額法」のみ適用されます。計算方法は、取得価額×定額法の償却率です。一度算出した額の減価償却費を、毎年計上します。ただし、初年度の場合は、実際に建物を使用した月数で、1年間の減価償却費を割って算出します。
なお、不動産経営を行う場合、家賃収入などから不動産経費にかかる諸費用を差し引くことが可能です。しかし、その結果として、税務上赤字になることもあります。この赤字部分をほかの所得から差し引くことで、所得合計が少なくなり、所得税などを押さえられます。これを「損益通算」と呼びます。
減価償却費を計上することで、損益通算し、所得を下げられます。所得を下げることにより、節税効果が期待できるというわけです。
損益通算により所得税を節約したい場合、新築や新しい物件、鉄骨造などの頑丈な建物は、あまり適していません。物件の耐用年数が長くなるため、1年あたりの減価償却費が少なくなり、節税効果を上げるのは難しいでしょう。減価償却費を多く算出するには、減価償却期間が短い物件を購入することが大切です。例えば、木造で築年数が古い物件(築古物件)などが挙げられます。
木造の物件は、法定耐用年数が22年となっており、鉄骨造など他の構造に比べて短く設定されています。また、築年数が古く、購入時に法定耐用年数を超えている物件の場合、法定耐用年数の20%の期間で減価償却をすることが可能です。同じ価格の物件であれば、木造の築古物件を選ぶことにより、短い期間で大きな減価償却費を計上することができるようになります。住民税も節税できます!
住民税は、所得税と同じく、個人の所得に対して課税される税金です。そのため、損益通算を通じて課税対象の所得金額を減らせば、節税できます。
住民税は、経費などを差し引いた所得に対して税率がかけられます。計算方法は、所得×10%+均等割です。税率は、所得金額の大小にかかわらず一律となっており、市区町村で4%、都道府県で6%の計10%です。建物・土地の評価額を下げて相続税を節税!
多額の現金を預貯金で所有し、そのまま遺産として相続した場合、金額がそのまま総資産額に計上されます。しかし、資産を現金ではなく不動産にすることで、実際の価値よりも課税評価額を減らすことが可能となり、相続税を節税できます。
また、不動産が賃貸物件の場合、土地と建物の両方に対する課税評価額が下がるため、更地の状態の土地を相続するよりも、さらに相続税を節税することが可能です。
土地については、アパートが建っていることで「貸家建付地」という名目になり、評価額を通常より20%程度軽減可能です。貸付建付地の土地の評価額は、土地の評価額×(1-借地権割合×借家権割合(0.3)×賃貸割合)となっています。
また、建物に関しては、通常の相続時に使用される相続税路線価ではなく、固定資産税評価額が使用されます。
固定資産税評価額は通常の路線価よりも低く見積もられ、借家権割合を差し引くことも可能です。そのため、評価額の概ね60%程度まで減額できる場合もあります。この計算は賃貸割合が高いほうがより効果的で、空き室の割合が高いとメリットが低くなってしまう場合があるため注意が必要です。
建物の相続税評価額は、賃貸物件建物の評価額=固定資産税評価額×( 1-借家権割合(0.3)×賃貸割合 )で求められます。「住宅用地の特例」で固定資産税と都市計画税を節税!
住宅の敷地として使用されている土地(住宅用地)については、納税者の負担を軽減する目的で設けられた「住宅用地の特例」という措置が存在します。特例措置によって標準評価額が下がるため、固定資産税と都市計画税も節税することができます。
そもそも固定資産税とは、土地や家屋を所有している人に課税される市町村の地方税です。税率は1.4%となっており、標準評価額×1.4%で求められます。
また、都市計画税は、都市計画法による市街化区域内の土地や家屋に掛かる税金のことです。税額は土地部分と建物部分を別々に評価して決められます。税率は一律0.3%です。
所有する土地を住宅用地として使える面積は、土地に建っている家屋の用途によって決められます。住居専用である場合、その家屋は「専用住宅」となり、家屋の床面積をすべて住宅用地として、家屋の床面積の10倍まで使用できます。
家屋の一部がお店や事務所などで使用されている場合、その家屋は「併用住宅」となります。併用住宅の場合は、住居スペースが床面積の50%以上であれば、専用住宅と同じく、床面積をすべて住宅用地に可能です。住居スペースが50%未満の場合には、延べ床面積の50%までが住宅用地です。ただし、住居スペースが延床面積の4分の1未満となる場合は、広さに関わらず、非住宅用地となります。
この床面積を上限として、実際の土地の面積から住宅用地の面積を計算します。広さで区分が異なるため、注意が必要です。例えば、200平方メートル以下の住宅用地は「小規模住宅用地」、200平方メートルを超える部分に関しては「一般住宅用地」に区分され、それぞれの特例率が適用されます。
小規模住宅用地の場合、固定資産税は通常の6分の1、都市計画税は3分の1です。一般用住宅地の場合も、固定資産税は3分の1、都市計画税は3分の2になります。
上記の「200平方メートル以下」は1戸あたりの面積となるため、例えば総部屋数が10室のアパートを経営している場合は、2000平方メートルまでが小規模住宅用地として特例を受けられます。ほとんどの場合、アパートが建っている土地に関しては、小規模住宅用地としてこの特例による恩恵を受けることができるため、土地に関する税金は大きく節約できるでしょう。贈与税の非課税枠も利用で節税も!
相続税と同様に、贈与税も現金で贈与するより、アパートを建てた方が節税になります。アパートを贈与する際には、「暦年贈与税」と「相続税精算課税」が選べます。
暦年贈与税の場合、受取人一人あたり、年間で110万円までが基礎控除額として認められているため、控除内であれば贈与税はかかりません。税額は、基礎控除額を超えるにつれ段階的に税率が上がる超過累進税率がとられています。
暦年贈与税には、特例贈与財産というものがあります。特例贈与財産とは、直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)(注)への贈与のことを指します。基本的には、特例贈与財産の方が、控除額が大きいため、節税効果があります。したがって、将来的に自分の子供や孫への財産の譲渡を考えるのであれば、現金で残しておくよりも、アパートを経営しておいたほうがお得になると言えるでしょう。
ただし、毎年同じタイミングで、同じ相手へ、同じ金額を贈与し続けた場合、通年での「定期贈与」と判断され、課税対象となることがあります。他にも、暦年贈与を安全に行うには、細かい条件がありますので、専門家への相談も視野に入れ、十分注意して行いましょう。
一方、相続時精算課税制度では、贈与時点で60歳を超えており、20歳以上の子や孫へアパートを贈与する場合という条件がるものの、2500万円まで非課税で贈与することが可能です。ただし、この贈与された資産は、実際に相続が発生した際に、相続税の課税対象として計上されます。
この二つの課税方法は、選択可能なため、しっかり計算して節税できる方法を選びましょう。法人税への節税にも利用できます!
年間所得が900万円を超えている方の場合、個人でアパート経営をするよりも法人化した方が良いことがあります。ここまでご紹介したように、個人でアパートを経営する場合、所得に応じた所得税と、住民税の納税が必要です。個人の所得税率は、累進課税方式がとられており、収入が増えれば増えるほど税負担も大きくなります。例えば、年収695万円~900万円未満で23%、900万円以上では33%以上の税率がかかります。
一方、2018年の4月1日以降に設立した法人の法人税率は、23.2%です。このように、諸条件にもよりますが年間の所得が900万円を超えると、法人税が所得税率を下回るため、法人化した方がおすすめというわけです。
また、アパート経営を法人化すると、代表である自身に対して支払う給料や役員報酬を、会社の経費として処理できるようになります。税金は基本的に利益の出た部分に対してかかるため、不動産収入の利益をすべて自分に役員報酬という形で経費にしてしまえば、法人所得は発生しません。そのため、もちろん法人税もかからないということになります。
さらに、会社から自分に報酬を支払うという形式にした場合、「給与所得控除」を利用可能です。年収1,000万円以上の場合、給与所得控除は上限額の220万円です。例えば、会社の純利益1,000万円を役員報酬として全額経費にすれば、給与所得控除で所得を780万円まで圧縮することができます。
納税額の計算や段取りは複雑になるものの、法人化すると役員報酬等を使った様々な手段で節税できるためお得です。-
ここまで、アパート経営で節税できるものについてご紹介しました。では、実際にアパート経営が向いているサラリーマンには、どのような特徴があるのでしょうか。ここでご紹介します。
・会社の業務や報酬に満足できない人
上司や部下に恵まれなかったり、報酬に満足していなかったりする場合、アパート経営がおすすめです。アパート経営なら、頭金がなくても経営が始められることもあるほか、管理などを委託すれば不労所得を得ることができます。
会社員としての経験があれば、より一層堅実な経営ができるでしょう。
・勉強が好きな人
勉強や調べものが好きな方は、アパート経営に向いています。経費や節税について下調べを行ったり、アパート経営するまでの流れをきちんと把握したりすることで、安定した経営が行えるでしょう。
また、アパート経営を始める前に、経営したいアパートの立地を確かめるなど、情報を収集することも大切です。ネットや不動産業者の話だけではなく、自分の目で確認しましょう。物件の入居率は、アパートの見た目だけで決まるわけではありません。利便性や周囲の治安、騒音なども判断材料となります。このような労力を惜しまない人が向いていると言えるのです。
・意思がはっきりしている人
アパート経営を行う目的や意思がはっきりしている人もおすすめです。「節税対策を行いたい」「不労所得を得たい」など、アパート経営を始める目的は様々あります。このような目的をしっかりと不動産会社に説明できることも大切です。
・リスクも考慮している人
収入だけではなく、リスクについても考慮して経営できる人が、アパート経営には向いています。空室の増加や、災害の発生などにより、収入が減少することもあるでしょう。その際に、臨機応変な対応ができるように、前もって準備しておくことが大切です。-
- では、先ほどと反対に、向いていないサラリーマンにはどのような特徴があるのでしょうか。
・短期間で利益を獲得しようと考える人
不動産物件は株やFXと違い、全く同じ物件というものが存在しないため、所有していた物件を売りに出したとしても、それがすぐに売れるかどうかはわかりません。したがって、売りたいタイミングが必ずしも売れるタイミングと一致することは、ほとんどありません。
このように、不動産経営は、あくまでも、中長期的に家賃で収入を得ていけることが強みの資産運用です。短期的な大きな利益を得たいと考えている人には向いていないと言えます。
また、アパート経営は金融機関から融資を受けられます。融資は、成功の見込みがあると認められた場合に受けられるのです。そのため、長い目でプランを立て、経営していくことが大切です。
・優柔不断な人
優柔不断な方は、アパート経営に向いていないかもしれません。上述したように、不動産というものは、同じものが存在しません。購入を決意したとしても、どの物件を購入するかどうかで悩んでいる間に、優良物件を他の人に買われてしまうといったケースも少なくないようです。このように、決断することが多いアパート経営では、意思決定がきちんとできる人でないと経営が難しい場合があります。
・オーナーになっただけで満足してしまう人
「アパートのオーナー」になるということは、その後の経営をしていく責任を持つということです。しかし、オーナーになるだけで収益が生まれると勘違いし、「何もしなくて良い」と考える方も少なくありません。アパート経営は、オーナーになってからが始まりだということを念頭に置いておきましょう。
ここまでご紹介したように、アパート経営にはさまざまなリスクや、かけなければいけない手間がたくさんあります。アパート経営をはじめる際には、自身の現状や将来のビジョンなどをしっかりと見据え、より確実な形で運用しましょう。-
この記事では、サラリーマンがアパート経営で節税する方法について、解説いたしました。
アパート経営で大きく節税を狙うには、一定の所得を持ち、減価償却費などの経費で収支を赤字にして、損益通算する必要があります。
また、最初にお伝えしたとおり、アパート経営は節税だけでなく、純粋な資産運用としても優秀な投資先です。損益通算による所得の圧縮が行えなくとも、経営利益により所得を増やしたり、相続時に節税をしたりすることも可能です。
ただし、一人で最初からアパートを経営するのは非常に困難です。特に、前述した方法で節税を狙うのであれば、綿密なシミュレーションが必要になります。そのため、不動産会社などの専門家に相談すると良いでしょう。
アパート経営に関するご相談は、当社でも受け付けています。専門的な知識を持ったスタッフが、一からアパート経営をサポートします。利回りに関することや、家賃回収に関することなど、不動産に関連するお悩みのある方は、ぜひ、ご相談ください。関連記事
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