サブリース解約における正当事由の解説、および実際の判例を紹介
オーナー様にとってはメリットも大きいサブリース契約ですが、その性質上、トラブルが発生しやすい傾向もあります。特に、サブリース契約を解約する際のトラブルに頭を抱えているオーナー様は多いかもしれません。しかし、正当事由があればサブリース契約を解約することは可能な場合があり、実際に過去の判例では解約が認められたケースもあります。
この記事では、サブリース契約・解約に伴うトラブルの発生とその要因、および防止方法や、解約における正当事由と実際の判例を紹介します。現在サブリース契約の解約で問題を抱えている方はもちろんのこと、これからサブリース契約を結ぼうと検討している方も併せて参考にしてみてください。
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前提として、サブリース契約とはどのような賃貸管理方式なのかについて、改めて確認しておきましょう。概要と、サブリース契約のメリット・デメリットについて解説します。
3種類の賃貸管理方式
一般的に、賃貸管理方式としては3種類の形態が挙げられます。1つは、オーナー様が全管理業務を行う「自己管理方式」、2つ目は一部、または全部の管理業務を管理会社に委託する「管理委託方式」、そして3つ目が「サブリース方式」です。
サブリース方式とは、オーナー様が所有する物件(建物または部屋)をサブリース会社が丸ごと借り上げるもので、サブリース会社が貸主として入居者の方を募集したり、管理業務を行ったりします。入居者の方にとってはサブリース会社が貸主ですが、オーナー様にとってはサブリース会社が借主という関係性になる点が特徴です。サブリース契約のメリット
大きなメリットとしては、「管理業務を完全に委託できる」「空室・滞納リスクを恐れずに安定して収入を得られる」という2点が挙げられるでしょう。
前者について、サブリース契約を結んだ時点で物件の実質的な所有者はサブリース会社になるため、管理業務の一切について、サブリース会社が行うことになります。オーナー様は普段の生活や仕事に集中できるため、大きなメリットといえるでしょう。
後者について、サブリース契約における最大のメリットといっても過言ではないかもしれませんが、空室や滞納があってもオーナー様には一定額の家賃収入が入ってきます。一般的な相場としては、満室時における家賃収入の8割〜9割程度を保証してくれるサブリース会社が多いようです。他にも、広告料・原状回復費用の負担が軽減されたり、相続税対策になったりというメリットもあります。サブリース契約のデメリット
一方で、サブリース契約ならではのデメリットも存在するので、改めて把握しておきましょう。
当然ですが、サブリース契約におけるオーナー様の利益は一定額と決まっているため、たとえ利回りが高い物件で満室状態であっても、毎月入ってくる家賃収入は変わりません。これをデメリットと取るかメリットと取るかはオーナー様次第でしょう。
また、保証されている家賃収入額は一定期間ごとに見直されます。そのため、サブリース契約を結んでいる限り半永久的に同額の家賃収入が入ってくるわけではありません。そして、免責期間についても注意が必要です。これは、物件の新築後や退去が発生した際に「入居付け」を行うためです。この期間は家賃収入を得られないため注意しておきましょう。
なお、入居する方を選ぶのはサブリース会社となるため、オーナー様にとって好ましくない方が入居するケースもあります。この点についてもあらかじめ把握しておいた方がよいでしょう。-
サブリース契約に関してはトラブルが多いという背景もあり、国土交通省、および消費者庁から注意喚起が行われています。それぞれについて簡単に見ていきましょう。
国土交通省による注意喚起
国土交通省では、相続をきっかけとして事業を始める方や、事業経験の浅いオーナー様が増加していることを背景に、サブリース契約を結ぶ際のリスクについて周知しています。賃貸住宅管理業法のもと、「誇大広告の禁止」や「不当な勧誘等の禁止」などが挙げられており、サブリース事業の規制として設けられているのです。
詳細については、以下よりご確認ください。
参考:適正化のための措置 | 賃貸住宅管理業法ポータルサイト – 国土交通省
賃貸住宅経営 (サブリース方式)をお考えのみなさま|国土交通省消費者庁による注意喚起
消費者庁でも、サブリース契約で相次ぐトラブルに対して注意喚起が行われています。サブリース事業を営む事業者は、国土交通省の賃貸住宅管理業登録制度に基づき登録を行い、オーナー様に対してサブリース契約を結ぶ前に「将来の借上げ家賃の変動にかかる条件」を書面で交付のうえ、「一定の実務経験者が重要事項として説明を行うこと」などが義務です。しかし、まだ登録を受けていないサブリース事業者も存在するため、契約締結に際しては慎重に判断し、事業者に直接確認することが推奨されています。
こちらも、詳細については以下よりご確認ください。
参考:サブリース契約に関するトラブルにご注意ください! | 消費者庁-
ここからは、サブリース契約・解約に伴うトラブルにおける代表的な4点について解説します。
家賃の減額請求を迫られる
1つ目は、最も多いトラブルともいわれている「家賃の減額請求」です。なぜなら、「サブリース契約のデメリット」の項でも述べた通り、家賃保証は永久的ではなく、定期的に見直しが行われるためです。オーナー様が契約締結前に契約内容を十分に確認していなかった場合や、サブリース会社の担当者が十分な説明を怠っていた場合に発生し得るトラブルといえるでしょう。また、実際には2年ごとに家賃保証額の見直しが行われるにもかかわらず、「10年間一律保証」などの誇大広告を掲載する事業者も存在するため、家賃の減額請求は行われるものと把握して慎重に契約内容を確認するようにしておきましょう。
高額な工事費用を請求される
サブリース契約を締結した時点で、物件の所有者はサブリース会社になります。そのため、物件管理全般もサブリース会社が行うことになるわけですが、空室状況が続くなどの事態に陥ればリフォーム工事などの物件設備改善に動かざるを得ません。その際、オーナー様に対して、程度の差はあれど工事費負担を求めてくるケースがあります。物件の設備改善を行うことで、サブリース契約満了後に空室リスクを回避できたり、物件を売却しやすくなったりというメリットが想定されます。サブリース会社の経営破綻回避にもつながり得ることから、工事費用の請求自体はあって然るべきでしょう。問題は、工事費用が想定以上に高額になる恐れがあるという点です。「こんなに工事費用がかかるとは聞いていない」というトラブルを防ぐためにも、あらかじめ、サブリース会社の担当者、および契約内容にて確実に確認しておきましょう。
サブリース解約自体を拒否される
サブリース会社に経営を任せている物件が満室状態となり、経営がうまくいっている場合、オーナー様としてはサブリース契約を解除して満額の家賃収入を得たいと思われることでしょう。しかしながら、そのような状態ではサブリース会社にとっても大きな利益が発生しているため、ほとんどの場合では解約を拒否されることが想定されます。これもトラブルに発展する要因の1つです。
中途解約が可能であると契約内容に明記されている場合はよいのですが、そうでない場合、サブリース会社は「借主」として「借地借家法」に守られている存在であることを認識しておきましょう。つまり、オーナー様の一方的な主張で契約を解除することはほぼ不可能です。賃料が支払われない
サブリース会社の社歴が浅かったり、経営ノウハウが脆弱だったりする場合、物件管理がうまくいかずに空室リスクを避けられず利益を上げられない、または経営破綻に陥ってしまうなどの恐れがあります。そうなってしまうと、サブリース会社から支払われるはずの保証収入が未払いになるケースもあるのです。民法上、賃料の未払いが3カ月以上継続した場合はオーナー様から契約解除の申し出ができます。しかし、賃料未払いはオーナー様の生活に直結する大きな問題でもあるため、あらかじめそのような事態が発生しないように、経営が安定している大手サブリース会社との契約を結んだ方が安心できるといえるでしょう。 参考:民法第541条| e-Gov法令検索
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サブリース契約および解約におけるトラブル発生要因として、最も大きいのが「借地借家法」の存在です。本法について、オーナー様とサブリース会社が十分に理解しているかそうでないかでトラブルの発生率は下がるかもしれません。
借主が強く貸主が弱い「借地借家法」の存在
簡潔に述べると、「借地借家法」は「借主が強く貸主が弱い」立場に置かれる法律です。厳密には、本来弱い立場にあたる借主を守るための法律ですが、サブリース契約の場合「オーナー様(貸主)と入居者の方(借主)」ではなく「オーナー様(貸主)とサブリース会社(借主)およびサブリース会社(貸主)と入居者の方(借主)」という関係性が構築されるため、複雑で厄介な事態に陥る傾向があるといえます。
「借地借家法」とは
賃貸借契約については、民法上で定められています。しかし、それだけでは「借主」側の不利益が大きいため、民法よりも優先される特別法としての「借地借家法」が施行されました。平成4年8月1日の施行以前は、「旧借地法」「借家法」「建物保護法」という3つの特別法が存在していましたが、それらをまとめたものが「借地借家法」となります。
サブリース契約の解約について特に関係のある条文は、以下の2点です。なお、条文については引用ではなく、分かりやすいように一部書き換え、省略している点をご了承ください。
第27条:貸主が解約の申し出を行った場合、申し出から6カ月を経過後に賃貸借契約は終了する。
第28条:貸主による解約の申し出は、正当の事由があると認められる場合でなければならない。
つまり、サブリース契約はすぐに解約できるわけではなく、そのうえ、正当事由と認められる理由がなければ解約できないということになります。
※参考:借地借家法 | e-Gov法令検索-
サブリース契約・解約におけるトラブル要因が分かったところで、いかにしてトラブルを防止できるかについて見ていきましょう。
契約内容を事前に確認する
前提として、サブリース契約を締結する際に受け身の姿勢でいることは推奨できません。「担当者の話を鵜呑みにする」「契約書に目を十分に通さない」ような姿勢では、後々「知らなかった」「聞いていない」と主張しても、契約書に明記されている限りその主張は通らないのです。積極的に担当者の話を聞き、契約書に目を通し、疑問点があれば必ず確認することが重要となります。
賃貸経営の目的と計画が契約内容と合っているか確認する
「そもそもサブリース契約でよいのか」と熟考することも、トラブル防止には効果的です。オーナー様としての経験が浅かったり、物件管理の時間が取れなかったり、少しでも副収入が欲しかったりという場合は、サブリース契約でも問題ないケースが多いでしょう。一方で、オーナー様が物件管理に十分な時間を取れる場合や実績がある場合、物件そのものの集客力が高い場合などはわざわざサブリース契約を結ばずとも、自主管理や委託管理を選んだ方が利益を上げられる可能性が高いといえます。ご自身の賃貸経営について、どのような目的と計画を持って運用していこうとしているのかを今一度考えたうえで、管理方式を選ぶとよいでしょう。
信頼に足るサブリース会社と契約を結ぶ
「契約書に明記されている限り主張は通らない」という点は先述しましたが、サブリース会社の担当者が十分な説明を行わない場合、その担当者や会社に問題があることは明白です。だから解約できるわけではありませんが、そのようなサブリース会社とは契約を結ばない方が賢明でしょう。担当者の対応能力を確認するだけではなく、サブリース会社としての実績や財務状況についても詳細に調べることが重要です。時間はかかりますが、複数社を比較検討したうえで、信頼できると思えるサブリース会社と契約を結ぶことが一番のトラブル防止につながります。
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ここからは、サブリース契約を解約する際の正当事由として認められる4つのケースについて解説します。
立退料の支払い
サブリース契約を解約することは、形としては「貸主(オーナー様)が借主(サブリース会社)に対して退去を求める」ことになります。先述の通り、借主は「借地借家法」で守られているため、正当な理由がない限りは強制的・一方的に退去させることはできません。
サブリース契約を解約したい場合は、「十分な額の立退料」をサブリース会社に支払うことで正当事由と認められます。サブリース契約解除は、サブリース会社にとって損失につながるため、その補填として十分な額を支払えるのであれば、解約することは可能でしょう。物件の老朽化に伴う取り壊しの必要性
建物の老朽化といってもさまざまなケースがありますが、よく用いられるのが「耐震基準」です。地震大国である日本において、昭和56年に制定された「新耐震基準」に基づいて建築されている物件と、昭和56年以前の「旧耐震基準」に基づいて建設された物件では、いざ地震が発生した際の被害が大きく異なります。「旧耐震基準」で建設された物件はいざという時に危険であることから、取り壊すか建設し直す必要があるでしょう。このように、明確な理由に基づいた「老朽化に伴う取り壊しの必要性」があると認められれば、サブリース解約の正当事由にあたります。
※参考:住宅・建築物の耐震化について|国土交通省売却せざるを得ない理由
オーナー様が購入した物件について、ローンを組んでいる場合は毎月の返済が発生します。サブリース会社からの保証賃料やその他の収入がある限り、生活とローンの返済を両立していける可能性はありますが、サブリース会社からの保証賃料は定期的に下がるため、場合によっては資金繰りが苦しくなるかもしれません。結果的に、ローンの返済や生活そのものが困難になった場合は、「生計維持のために物件の売却が必要」として正当事由と認めてもらえる可能性があります。
また、市街地再開発事業や土地区画整理事業に伴って物件を売却しなければならないケースも、サブリース解約の正当事由として認められます。この際、区画整理によって土地環境が向上し、将来的にオーナー様が所有する土地の価値が高まる可能性があるため、サブリース会社からの明け渡し条件として高額な立退料の請求が行われるケースもあるようです。オーナー様、または親族の入居
海外在住のオーナー様が帰国に際して住む家が必要になった、サブリース契約を結んでいる物件とは異なる物件に居住していたが何らかの理由で住む家が必要になったなど、オーナー様本人が居住する必要性が出てきた場合、ご本人の経済的状況にはよりますが立退料を支払ったうえで明け渡してもらうことは正当事由として認められやすいでしょう。
オーナー様の親族が居住する必要性が出てきた場合も正当事由として認められる可能性はありますが、ご本人のケースに比べると効力が弱まるため、サブリース会社との交渉が必須となります。-
以下の3点については、サブリース契約の解約における正当事由とは認められないため注意が必要です。
・利回りの向上を狙う
・高値での売却を狙う
・売却しやすい状態を狙う
いずれも、オーナー様の金銭的メリットのみに終始した内容であり、借主であるサブリース会社にとっては一切の得がありません。貸主側の一方的な要望かつ、借主にとってメリットがない解約の理由は正当事由とは認められないと覚えておきましょう。-
実際に、サブリース契約の解約に関して行われた過去の判例について、いくつか見ていきましょう。なお、本項で紹介する判例は、一般財団法人不動産適正取引推進機構が公開している「RETIO判例検索システム」を参照しています。
※参考:RETIO判例検索システム|一般財団法人不動産適正取引推進機構平成27年8月5日の判例(東京地裁)
本件では、サブリース契約を結んでいたオーナー様が、「老朽化した自宅の補修改築のためにまとまった資金を必要とし」ており、そのためにサブリース契約を結んでいた物件の売却を希望していました。本件のオーナー様は、築60年を超える木造の草ぶき平屋建ての建物に居住しており、老朽化した自宅の補修改築に向けてできる限り高額での物件売却を望んでいたとのことです。物件の高額売却に向けて、オーナー様は空き家状態での売却を希望しており、サブリース契約満了時期である平成26年1月4日に契約を終了させる必要性は強いものと判断されています。
対して、オーナー様が契約を結んでいたサブリース会社は、当該物件の運用による月額利益が3万3,000円となっており、仮に契約が終了しても会社経営に多大な損失は与えないだろうとも判断されました。
なお、オーナー様の主張についてはそれだけでは正当事由にあたらないものの、サブリース会社にとっても当該物件を運用し続ける必要性が認められなかったため、総合的な判断として「オーナー様がサブリース会社に対して50万円の立退料を支払うことで、サブリース契約の解約における正当事由に該当する」という判決が下されています。裁判所 東京地裁 判決日 平成27年8月5日 原告 オーナー様(貸主) 結果 サブリース契約の解約における正当事由が認められた 平成24年1月20日の判例(東京地裁)
本件の前提として、11階建の共同住宅を所有していたAさんが、当該住宅の1階から8階部分をBさんに対して、「第三者に転貸できる」という特約付きで賃貸契約を交わしていることが挙げられます。加えて、Bさんは平成11年1月1日にサブリース会社Yに対して、当該住宅の1階から8階部分における賃借人としての地位を譲渡し、Aさんは平成20年9月30日に、所有していた11階建物件を不動産会社Xに売却、および賃貸人の地位も譲渡しました。これによって、本件における争点である「1階から8階部分」について、賃貸借契約はサブリース会社Y(借主)と不動産会社X(貸主)に継承されたことになります。
平成21年10月8日、不動産会社Xはサブリース会社Yに対して、賃貸借契約を平成22年4月20日をもって満了させ、以後の更新はしないと通知しましたが、サブリース会社Yはこれを拒否しました。これに対して、不動産会社Xは契約満了後の翌日(平成21年4月21日)から明け渡しが完了するまでの期間、1カ月当たり279万5,927円の割合で賃料相当損害金の支払いを求めています。サブリース会社Yは、本件の更新拒絶は正当事由に該当しない(借家法1条の2に基づく)として裁判が行われました。
東京地裁は、本件について「借家法1条の2に基づき正当事由が必要である」「サブリース会社Yには当該住宅の1階から8階部分について、事業として使用する必要性が強いといえる」「不動産会社Xは、サブリース会社Yに比べて当該住宅の1階から8階部分を使用する必要性が薄い」という判断のもと、不動産会社Xによる更新拒絶には正当事由が認められないとし、本件における請求を棄却しています。裁判所 東京地裁 判決日 平成24年1月20日 原告 不動産会社X(貸主) 結果 サブリース契約の解約における正当事由は認められなかった 令和元年11月26日の判例(東京地裁)
資産管理会社X(貸主)とサブリース会社Y(借主)との間で、資産管理会社Xが平成16年までに購入した計3物件について賃貸借契約が行われており、平成29年4月12日までに3物件について契約の更新が行われています。1物件について、平成29年9月から5か月間、転借人がいなかったため免責期間として賃料の支払いはなく、他の2物件についても保証家賃の減額が定期的に行われていました。資産管理会社Xは平成29年7月24日に書面にて、契約期間満了日における全物件の更新解除を通知したものの、サブリース会社Yは期間満了後も全物件を占有しており、資産管理会社Xは本サブリース契約について借地借家法第28条のもと物件の明け渡しと、不法行為への損害賠償金として52万5,000円の支払いを求めました。加えて、令和元年7月4日、紛争の早期解決を求める資産管理会社Xは各物件の差額賃料合計6万3,250円を支払うことも提案しています。
東京地裁は、資産管理会社Xの主張には「相続税対策として資金を捻出すること」を背景に、空室状態での全物件売却を希望していることが伺えるものの、それ自体に自己使用の必要性は薄いと判断し、他の主張についても借地借家法第28条における正当事由には該当しないと判断しました。
一方で、サブリース会社Yにおける全物件の使用についてはその必要性が強く、仮に全物件を明け渡す場合は相当額の立退料が必要であるが、資産管理会社Xが提案した立退料は6万円余りと非常に少額であり、正当事由の補完には至らないと判断しています。なお、両者間で交わされていた「自由に解約できる旨の契約内容」については本件については無効となるため、サブリース会社Yが借地借家法第28条について違法行為を行ったとはいえず、結果として資産管理会社Xの主張は全て棄却されました。裁判所 東京地裁 判決日 令和元年11月26日 原告 資産管理会社X(貸主) 結果 サブリース契約の解約における正当事由は認められなかった
以上、過去の判例について3件見てきましたが、十分な正当事由がない限りは貸主側の主張・請求は棄却されることが多いといえるでしょう。-
サブリース契約の解約に際しては、ここで紹介する流れで手続きを行いましょう。
サブリース契約書の条項を確認する
サブリース契約書における、「解約申し出の期限」「解約に伴い発生する違約金額」「サブリースの契約期間」の3点について、改めて確認しておきましょう。契約書に明記されている内容はオーナー様の主張よりも重要視されるため、時間と手間をかけないためにも各条項を確認したうえで解約手続きに進みます。
サブリース会社に解約通知書を送付する
契約内容の確認後、サブリース会社に解約通知書を送付します。送付前には、サブリース会社に対して解約意向を伝え、打ち合わせを行うことも必要です。なお、解約通知書の作成に際しては以下の項目を記載しておきましょう。
・サブリース会社の会社名
・オーナー様の氏名と住所、捺印
・解約対象の物件名や所在地
・解約通知日
・契約終了希望日
・契約書におけるどの条項に基づく解約か
・違約金、あるいは立退料
なお、解約通知書については、公益社団法人全日本不動産協会が公開しているひな形もあります。こちらを参考にして作成するのもよいでしょう。
参考:貸室賃貸借契約(サブリース)終了についての通知|公益社団法人全日本不動産協会サブリース会社との話し合いの場を設ける
解約通知書がサブリース会社に届いたら、オーナー様とサブリース会社間で話し合いの場を設けましょう。合意を得られた場合、合意書を作成のうえ、違約金や立退料があれば期日までに振込を行い、合意に基づいた期日にて解約手続きの一切が完了となります。
もし合意を得られなければ専門家や弁護士に相談しつつ交渉を重ねていくことになりますが、先述した過去の判例にもある通り、解約の理由が正当事由と認められない限り、裁判に発展しても棄却されてしまう恐れがあることを把握しておきましょう。-
正当事由と認められる解約理由と、「借地借家法」に基づく借主における権利の強さ、そして契約書の内容など、サブリース解約においては複数の要素を把握したうえで手続きを進める必要があります。しかし、借主であるサブリース会社の合意が得られなければ、交渉が長期化しオーナー様の負担が増幅することは確実です。できる限りスムーズに交渉を終わらせるためにも、早めに弁護士など専門家の力に頼ることが重要になるでしょう。手続きの全てを独力で完結させようとすると、長大な時間と手間がかかるうえに、結果として解約ができず損をする恐れもあり得ます。サブリース契約の解約に際しては、賃貸借契約に強い弁護士に相談しつつ、手続きを進めていくことがおすすめです。
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この記事では、サブリース契約・解約におけるトラブルの発生とその要因、およびその防止方法、そして過去の判例について紹介しました。記事中で紹介した3件の判例にもある通り、重要なのは「サブリース契約の解約理由が正当事由に該当するかどうか」です。もちろん、サブリース会社との話し合いで合意を得られればスムーズではありますが、裁判沙汰に発展することも珍しくはありません。現在、サブリース契約の解約において困難を抱えている方や、これからサブリース契約を締結しようと検討している方は、本記事で紹介した内容を参考にしてみてください。
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